研究課題
経済活動のグローバリゼーション化に伴い増加しているシフトワークは、生活習慣病(糖尿病、高血圧、発癌等)の高リスクファクターであり、大きな社会問題となっている。これは、シフトワーカーの就業時間が体内時計のリズムが大きくずれる慢性時差状態になっており、時計システムが破綻したためと考えられる。しかし、現在も未だその分子機構は全く解明されていない。今回我々は、時差消失(NJL)マウスを開発し(Science 2013)、これと野生型(WT)マウスが、時差条件下でどのように反応するかを検索した。明暗リズムを5 日毎に8 時間前進させたところ、NJL はその都度瞬時に再同調したが、WT は再同調できず、常に明暗リズムとは乖離したリズムで行動していた。まず、中枢時計である視交叉上核(SCN)における細胞時計は、WTではシクロヘキシミド除去後、一週間ほどかけて、時計細胞はオリジナルの時間位相を回復するが、NJLでは時間位相の回復は起こらなかった。また、時差環境下におけるSCN や肝臓の時計遺伝子の発現プロファイルをReal-Time PCR 法により定量的に解析したところ、時計遺伝子の日周リズムが、NJLにおいてはWTよりもずっと早く回復することがわかった。続いて、4 か月間にわたって、明暗周期を5 日毎に8 時間前進させるという慢性時差環境下(シフトワークのモデル)にマウスをおいて、行動リズムを計測した。この条件下では、WTでは、常時、体内時計と環境時計は脱同調していたが、NJLでは、時差の都度、瞬時に再同調し、脱同調は見られなかった。この時差条件下で、食事の影響を検索した。通常食を自由飲食下で与えたマウスの体重変動は、WTとNJLの間に差は無かった。また、高脂肪食を自由飲食化で与えても体重変動は無かった。現在、制限食餌下で、この両者に差が出るか検討中である。
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Science
巻: 342 ページ: 85-90
10.1126/science.1238599.
Cell
巻: 155 ページ: 793-806
doi: 10.1016/j.cell.2013.10.026.