人は他者の顔の左側部分を好んで注視する。この顔の左視野選好が生じる神経メカニズムは明らかでない。左視野選好は大脳皮質が未発達な乳児でも生じることから、皮質下の生得的な機構が関与している可能性が考えられる。そこで本研究では、顔の左視野選好は皮質下の上丘経路によって生じるのではないかという仮説を検証することを目的に研究を行った。そのために、網膜のS錐体だけを特異的に活動させる方法を工夫して、上丘を一切経由しない顔刺激を作り、顔の左視野選好が消失するかどうかを調べた。その結果、顔の輝度刺激では先行研究同様の有意な左視野選好が見られたが、S錐体単独刺激では、そのような明瞭な左視野選好はみられなかった。
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