最終年度では互いの脳波をフィードバックする2者間ニューロフィードバックを中心に実施した.フィードバックする脳波は初年度の実験結果からα波帯域のパワーを視覚刺激で表示する方法を用いた.それぞれの脳波結果を相手のディスプレイに表示し,各被験者はそれぞれの視覚フィードバックが大きくなるように心的状態を変えていく.つまり,相手の振る舞いの結果が自分の行動を変え,またそれが相手の行動へと作用するコミュニケーション状態を実現した.結果として,このコミュニケーション状態を利用し,双方のα波を高めるような訓練が成功した.能動的に運動をして行う非言語コミュニケーションの実験も行い,非言語コミュニケーションからの解析を行ったが,身体的相互作用でみられたターンテイキングのような状態は明らかにならなかった. 脳波のフィードバック方法としては,相互に相手の脳波状態(アルファ波)をフィードバックがされるコミュニケーション方法と,相互のα波の積をフィードバックするコミュニケーション方法を比較した.積の場合には通常の言語コミュニケーションのように自分の脳波結果(コミュニケーションでは発言結果)も部分的にフィードバックされる.結果としては,相互に相手の脳波をみる交換型コミュニケーションの方がフィードバック効果があることが確認された. さらに,二者間でのコミュニケーション型ニューロフィードバックで訓練をした場合には,その後,一者でニューロフィードバックを行ってもその効果が見られることがわかった.これは一者でのニューロフィードバックで訓練がうまくいかない被験者にも二者で行えばその効果を示す可能性がある.
|