研究課題/領域番号 |
25560434
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
廣田 秋彦 島根大学, 医学部, 教授 (50156717)
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研究分担者 |
伊藤 眞一 島根大学, 医学部, 准教授 (10145295)
濱 徳行 島根大学, 医学部, 助教 (60422010)
河合 美菜子 島根大学, 医学部, 助教 (50710109)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光学測定 / ノイズ / 機械刺激装置 / 無振動 |
研究概要 |
我々は、自作した光学的膜電位測定システムを用いて脳の感覚運動野の機能を調べる研究を進める内に、市販の刺激装置の一部が光学測定には使えないという問題に直面した。この研究は、従来の電気生理学的手法での使用を前提とした装置を、光学測定で用いる装置として新たに作り替えるものである。初年度は、光学測定ではわずかな振動もノイズ源となることを考慮して光学測定用機械刺激装置の開発を行った。 開発した機械刺激装置は、可動部の先に取り付けた刺激糸を、ソレノイドコイルにより駆動し、メカニカルに実験動物の皮膚を刺激する装置であり、基本的構造はダイヤメディカルシステム株式会社より市販されていた装置と同じである。ただし、市販品では可動部の制御をバネと金属壁というメカニカルな手法で行っており、可動部がぶつかる部分にゴムを張るなどして静音化を標榜してはいるものの、カチカチという駆動音とともに振動が発生することは不可避であった。極端に振動を嫌う光学測定では、このような機械刺激装置を防振台の上に設置するなど論外であり、防振台の外に設置しても、光学測定装置の光軸に揺れが生じ、ノイズ源となることを防ぐことは出来なかった。これは、装置が、あくまで電極を用いた従来の電気生理学での実験での使用を前提としたものであり、光学測定に併用して使用することは想定していないことによると考えられる。 我々は新たに開発した専用の電子回路でソレノイド駆動を精密に制御することで、メカニカルな機構無しに駆動範囲を制限する一方、バネをネオジム磁石の反発力を利用したものに置き換えることにより、可動部を、全く駆動部等に触れること無しに駆動させることに成功した。この新たに開発した機械刺激装置は、防振台上に直接設置しても光学測定のノイズ源となるような振動を全く生じないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、電子回路の出力部に直流モーターの制御用に用いられているH-スイッチと呼ばれるIC(今回使用したのは東芝製TA8429H)を使用することで、5Vのデジタルロジックシグナルのみでソレノイド出力端子に最大30V、平均3Aの電流を正方向、逆方向のいずれにも流せる上、端子の短絡によるブレーキ動作も可能となる。このICの導入により、制御回路の開発や試作はデジタルロジック回路の開発、試作のみを行えばよく、制御回路の開発に必要な時間を大幅に削減出来た上、安定した動作が保証された。この結果、極めて短期間に、高精度な制御回路を開発し、実験動物を用いての検証実験を行うことが出来、ほぼ交付申請書に記載した通りのところまで達成することが出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定通り平成25年度中に光学測定用機械刺激装置の開発を終えることが出来た。したがって、2年目の今年度(平成26年度)は、この装置を併用して実際に動物実験(ラット)の大脳皮質の膜電位を光学的手法により数百ヶ所からを同時に測定する実験を開始し、実際に使用することで初めて明らかになる装置の問題点を徹底的に洗い出して仕上げてゆく。また、刺激糸として用いるナイロン製の糸の太さごとに機械刺激の大きさがどの位であるかのキャリブレーションを取る必要があるので、その方法についても検討する。 一方、本研究計画のもう一つの開発課題に予定している、光学的測定領野内の組織を直接電気刺激することを目的とした、刺激用透明電極の開発を開始する。 平成25年度に総合理工学部の連携研究者の研究室で行われていた酸化チタン系の透明導電体開発の最終段階である添加物比率の最適化がほぼ終わったとの連絡が届いたところで、さっそく、新材料である低抵抗の透明導電物質を透明電極基板にスパッタリングし、その上にニ酸化ケイ素被膜をかぶせることによって絶縁することで透明電極を作製する。この電極で実際に1μA程度の電流を流して、動物実験の大脳皮質を刺激するテストを行う。現在用いている酸化亜鉛を透明導電物質とした透明電極で問題となっている、透明導電物質の発熱や、発熱に起因すると考えているニ酸化ケイ素被膜にクラックが入るなどの現象が本当に回避出来るかを実証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の再投稿時の英文校閲費、カラー図版代および別刷代として確保しておいた予算であったが、実験で良いデータを記録するのに予想外に時間を要したこと等で論文執筆が遅れ、年度内にEditorからの解答が得られなかったために、26年度に持ち越しとなったものである。 論文投稿先のEditorからの解答が得られ次第、再投稿時の英文校閲費、カラー図版代および別刷代として使用する予定である。
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