研究課題/領域番号 |
25560435
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高橋 晋 同志社大学, 高等研究教育機構, 准教授 (20510960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 海馬 / マルチニューロン活動記録 |
研究概要 |
本研究は、ラットが新規な場所情報を獲得する過程で起こる海馬CA1野内の場所細胞の活動に着目し、その可塑的変化に関与する樹状突起逆伝播スパイクの役割について解明することを目指す挑戦的な試みである。 本年度は、垂直に配置された複数の計測点を持つシリコン電極を用いて、マルチ(多数)ニューロン活動を長期間安定して記録する方法について、電極の設置方法や手術法を中心に改良する。同時に、マルチ(多数)ニューロン活動を分離するスパイク・ソーティング法についてもシリコン電極に最適化することで、細胞体と樹状突起それぞれの活動を弁別する精度を向上させることを目的とした。 シリコン電極を用いてマルチニューロン活動を長期間安定して記録する方法を確立するために、電極先端近くの全てのニューロンの活動をもれなく検出するため、専用の電極制御装置(マイクロドライブ)をPCB(プリント基板)用CAD(Computer Aided Design)と3D CADを駆使して設計し、3Dプリンターで出力することによりプロトタイプを作製した。マルチニューロン活動を長期間安定して記録できるように、マイクロドライブと記録用の前置増幅器(ヘッドアンプ)の間を柔軟なワイヤーで接続することにより、マイクロドライブへの振動伝達を最小限に抑え、長期間安定して同一ニューロンを計測するように設計されている。 また、マルチ(多数)ニューロン活動を分離するスパイク・ソーティング法についてもシリコン電極に最適化する試みを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、(1)垂直に配置された複数の計測点を持つシリコン電極を用いて、マルチ(多数)ニューロン活動を長期間安定して記録する方法について、電極の設置方法や手術法を中心に改良し、(2)同時に、マルチ(多数)ニューロン活動を分離するスパイク・ソーティング法についてもシリコン電極に最適化することで、細胞体と樹状突起それぞれの活動を弁別する精度を向上させることを目的とした。(1)のマイクロドライブの設計と製作が遅れたため、(2)のスパイク・ソーティング法を完成させることができなかった。このため、達成がやや遅れている結果になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、シリコン電極用のスパイク・ソーティング法を完成させた後に、海馬CA1野の錐体細胞層を中心にシリコン電極を刺入し、そのラットが未経験の実験ボックス内で餌を求めて行動している際、マルチニューロン活動を記録し続ける。そして、記録したマルチニューロン活動を個々のニューロン活動に選別し、それぞれのニューロンに対して、スパイクの波形情報から細胞体、樹状突起の判別を行う。更には、相互相関解析法を用いて、細胞体から樹状突起へ逆伝播するスパイクを検出し、単一ニューロンの細胞体と樹状突起のペアを検出する。最終的には、ラットが未経験の環境を認知する際の可塑的変化の過程と樹状突起逆伝播スパイクの伝播確率との関係について、場所情報量を中心として解析する。また同時に、樹状突起逆伝播スパイクを抑制し制御していることが示唆されている介在細胞活動についても解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、マルチニューロン活動を個々のニューロン活動に正確に分離する手法をシリコン電極に最適化する予定であったが、完成には至らなかった。そのため、当該助成金が生じている。 翌年度分として請求した助成金と合わせて使用することにより、必要となる計算用ソフトウェアなどを追加することで、シリコン電極に最適化されたマルチニューロン活動分離手法を完成させる。
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