研究課題
脳機能は、複雑な神経回路網によって制御される。脳機能を理解するためには、回路網を形成するある特定神経路の機能を解明する必要がある。ところが、これまで、特定神経路の解析を可能にする実験手法がなかったため、その機能解析は進んでいなかった。最近、我々のグループは、新しいタイプのレンチウイルスベクターである高頻度逆行性遺伝子導入ベクターとアデノ随伴ウイルスベクターを組み合わせた二重遺伝子導入システムの開発に成功し、特定神経路の機能解析が可能となった。我々は、解剖学的・生理学的に詳細な解析が行われている大脳基底核回路に着目し、特に、皮質―線条体路に焦点を当てた。Rhoファミリー関連分子は、神経発生の過程で様々な機能を制御するが、高次脳機能における役割は不明な点が多い。本研究では、Rhoファミリー関連分子として、Rho、Rac、Cdc42、Rhoの標的タンパク質の一つであるRho-kinaseに注目し、これら分子群の皮質―線条体路における役割を解析した。二重遺伝子導入システムを利用して、皮質―線条体路において、Rho、Rac、Cdc42、Rho-kinaseの活性を抑制した遺伝子改変マウスをそれぞれ作製した。これらのマウスの自発運動量、薬物投与による運動量変化、運動学習を検討したところ、有為な表現型は認められなかった。次に、これらのマウスの皮質線条体ニューロンの生存を組織学的に解析した結果、RhoあるいはRho-kinaseの活性を抑制したそれぞれのマウスでは、皮質線条体ニューロンの数が顕著に減少しており、さらに、この細胞数の減少はアポトーシスに起因することが分かった。これらの結果から、皮質線条体路を形成する大脳皮質ニューロンの生存には、Rho/Rho-kinaseシグナル伝達系が重要な役割を果たすことが明らかになった。
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