研究課題
森林は,①土地利用,②木材利用,③非木材林産物利用,④環境サーヴィス利用,および⑤雇用を通して地域経済の振興や生計向上に貢献する.本研究は,国有林の管理経営システムがこれらをどのように組み込んでおり,実際に機能しているのかを,制度と地域社会の実態を通して検証した.林産物は森林型によって第一義的に規定されるため,落葉季節林帯にあり,人口稠密かつ市場に近いジャワ島と人口希薄なミャンマーを研究対象にした.ジャワ島では分権化以降の地域対策として,伐採時の分収を骨子とする共同森林管理(PHBM)が導入され.そこでティーク(Tectona grandis)林地帯における森林村において世帯調査を行ったところ,マージナルな地域では,経済発展に伴い出稼ぎが加速し,若年層では挙家離村も始まっていることが明らかになった.出稼ぎ先は,事例の1村をとってもジャワ島内の都市部だけでなくパプアやマレイシアまで含む全域に拡大し,就労先も都市インフォーマルセクターとともに,建設業やアブラヤシ農園が多かった.①~⑤の機会のうち,③~⑤は地域経済や生計にさしたる効果をもたらさず,森林破壊ににつながる①と②の利用が経済的に大きい役割を果たしていた.PHBMは本来,地域社会が主体的に圧力を抑制し,代わりに伐採収入の一部を地域に還元するべく制度設計がなされているが,意向調査からはPHBMに対する人々の無関心がうかがえた.機械的な分収によってもたらされる資金は,新たなコンフリクトを生み出す可能性が示唆された.ジャワ島では生計における非木材林産物の重要性はほぼ失われたが,ミャンマーでは人々の生業オプションのひとつをなしていた.しかしカッチ(Acacia catechu)生産に従事する人々への面接調査では,住民の資金力の脆弱性が前渡金を構造化し,森林局への伐採許可申請も仲買人が行っていることが明らかになった.
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Forests, Trees and Livelihoods
巻: 23 ページ: 159-174
DOI: 10.1080/14728028.2014.886532