研究課題/領域番号 |
25570005
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20232382)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タケノコ / 土壌保全 / 発酵 / 増殖技術 / 樹液 |
研究概要 |
アフリカには学名をオキシテナンテラ・アビシニカというタケが広い範囲に分布していて、各地でさまざまな用途に利用されている。タンザニア南部高原では、このタケから酒を造って常飲・販売している。萌芽してきたタケノコの先端を切除すると、その断面からしみ出てきた樹液が自然に発酵して酒になる。彼らはこの酒およびタケをウランジと呼ぶ。収穫作業を容易にするため、屋敷や畑の周辺にウランジを植えているが、その発達した根茎のおかげで生活空間を土壌環境が守られてきたのである。本研究では、ウランジの経済性と土壌保全性に着目し、タケを植林体系に組み込むことを目的として、1)酒の生産工程および生育・収量の最適条件の解明、2)酒の発酵を止める加工技術の構築、3)竹林が周辺環境におよぼす影響について調査している。 本年度は周辺環境とウランジ滲出量の関係について調査する予定であったが、測定機器の調子が悪く計測を順延し、それに代わって株の増殖方法と酒の発酵停止技術について聞き取り調査を開始した。一般にウランジの増殖には成竹の根茎を掘り起して移植するが、採取する季節や成竹のエイジなどによっても活着率が大きく異なることが分かった。また、発酵停止については、できるだけ簡易な方法でウランジ独特の風味を損なわずに発酵だけを停止することを目指し、タンニンの添加による発酵の停止を試みた。日本から持参した柿渋タンニンを採取直後のウランジに添加してみたが、アルコール発酵を止めるには至らなかった。ウランジは、採取後1日半ほどで糖が消費し尽くされて発酵が自然に停止する。一方、耐圧瓶で70℃で10分間湯煎すると、酵母の死滅によって発せられる硫黄臭が少し気にはなるものの、発酵を止めることはできた。採集直後に湯煎した甘いウランジを、発酵が停止したアルコール濃度の高いウランジとブレンドすることで、多彩な味わいを再現できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周辺環境とウランジ滲出量の関係についてはデータをとれなかったが、タケの移植・増殖に関する有意義な情報を得ることができた。また、平成26年度に予定していた発酵を停止する技術の調査を前倒しで実施し有益な結果を得ることができたので、総合的にはほぼ順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は、本年度の交付申請書に記した研究計画と基本的に同じで、ウランジの経済性と土壌保全性を活用しながら、タケを植林体系に組み込むことを目的として、1)ウランジの生産工程および生育・収量の最適条件の解明、2)ウランジ酒の発酵を止める加工技術の構築、3)竹林が周辺環境におよぼす影響の解明に関する調査を並行して実施していくことになる。平成26年度は、前年度に実施できなかった項目1)を再度試みる一方で、項目2)でウランジの加工に新たな可能性が示唆されたので、瓶詰めを試作できるかもしれない。また次年度の雨季(11月~翌年3月)に竹林の環境保全機能について計測するための準備にも取りかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
助成金の大半を海外への渡航費と現地調査費に使用した。そのため、為替レートの変動などによって、計画との間に若干の差が生じた。 平成25年度に生じた次年度使用額は、平成26年度の助成金と合算し、25年度同様、主に海外調査のための渡航費および現地活動費として使用する。
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