研究課題/領域番号 |
25570006
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮原 曉 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 准教授 (70294171)
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研究分担者 |
井上 幸孝 専修大学, 文学部, 准教授 (20399075)
伏見 岳志 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (70376581)
立岩 礼子 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (80321058)
菅谷 成子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (90202126)
ヒメネス ホアンラモン 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (10525281)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域研究 / 東南アジア / メキシコ / アジア / 地域間交流 |
研究概要 |
本研究の目的は、16~18 世紀、ヨーロッパ世界との邂逅に伴う東・東南アジアの文化変容を、人類学的視点をも交えて再解釈することにある。平成25年度には、メキシコから海上貿易によって東・東南アジアにもたらされたモノ、技術、情報が伝達されるプロセス、および媒介者による翻訳・編集を調査項目とする歴史学、社会人類学、考古学的調査をフィリピン、中国・福建省、メキシコで実施し、メキシコ史研究者と東・東 南アジア地域研究者の協働により、データの検討を行った。 6月15日に、京都外国語大学と慶応義塾大学日吉キャンパス、愛媛大学をテレビ会議システムで結び、研究計画と方法論について詳細な打ち合わせを行った。その結果、①メキシコと東・東南アジアとの間の銀、穀物、嗜好品、建築技術、絹、陶磁器等の流通の実態、②これらの財やモノ、技術をめぐる情報の伝達、翻訳、編集の実態、③財やモノ、技術をめぐる双方向での情報のやり取りが東・東南アジアにもたらした文化変容の3つのフェイズに即してデータの集積を行うことを確認した。 現地調査に関して、中国・福建省での現地調査では、新大陸由来の農作物、嗜好品のうち、サツマイモの品種、加工方法等について調査を行い、その優位性を確認した。フィリピンでの調査では、サツマイモ、トウモロコシ、チョコレートの伝播プロセスについて調査に加え、陶磁器の伝播経路、建築技術の伝播経路についての実態調査を分担して行うとともに、モノ、技術、情報の媒介者としての中国人商人や中国系メスティソの役割について、歴史学的な調査も行った。 研究集会に関して、2月26日に、国際シンポジウム「大洋が結ぶ世界(16-17世紀)--ラテンアメリカから東アジアへ」を京都外国語大学京都ラテンアメリカ研究所主催として開催した。このシンポジウムでは、日本史や台湾史、考古学の専門家と本研究のテーマに関する意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内研究会について、6月と2月の2回開催することができた。また現地調査についても、フィリピンでの調査(4名、計4回)をはじめ、中国福建省、メキシコでの現地調査を概ね計画通り実施することができた。ただしメキシコの場合は、予算の制約のため、個人研究費等を利用した。 一方、2月に京都外国語大学において、本研究のテーマに関わる国内外の研究者を招聘し、フィリピンとメキシコとの交易の、日本を含めた東アジア世界の形成への影響について理解を深めるとともに、研究分担者と講演者との議論を通じて、本研究の方向性を確認することができた。 またインターネット上に作業スペースを作成し、研究分担者の間で、本テーマに関する情報交換を円滑化することができた。以上の点から、本研究は、ほぼ計画通り、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の現地調査では、得られた情報を、メーリングリストを経由するなどして分担者どうしで共有し、意見交換することで調査項目を追加することなどができた。このことは、異なる専門、地域を研究する研究者による合同調査の重要性を改めて確認する契機ともなった。 このため26年度は、フィリピンのセブ、ないしマニラで本研究のテーマに関わるワークショップと巡検を行い、研究分担者、国際シンポジウムの講演者、様々な研究分野を持つ現地の研究者を交えて議論する機会を持ちたいと考えている。そうすることで、メキシコからフィリピンへのモノ、技術、情報の伝達と翻訳に関する多角的理解が可能となるとともに、研究成果の現地社会への還元し、将来的に文化遺産の保存や次世代への継承を喚起することが期待される。 また16世紀から18世紀を研究対象としている本研究では、モノ、技術、情報の伝播のプロセスをたどる際や、そうしたプロセスへの東・東南アジアの貿易を担う中国人商人、および現地化した中国系メスティソの関与を明らかにするうえで、資料収集面での工夫が必要である。26年度は、前年度の現地調査で得られた知見にもとづきながら、新たな資料の発掘に努める。その際、人類学の理論にもとづく作業仮説をたてることで、直面する課題に答えるとともに、人類学的な歴史研究をすすめるための道を開きたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
分担者のうち、メキシコでの現地調査を計画していた3名については、予算が削減されたことに加え、円安などの問題もあり、旅費を捻出することが困難な状況となったため、今年度、まとめて現地調査を行うことにせざるを得なくなり、昨年度分を繰り越しした。 今年度の予算と、昨年度、繰り越しした額をあわせて、メキシコでの現地調査に充当する計画である。ただし分担者は、昨年度同様、メキシコでの現地調査を他の資金によって実施し得る可能性もあるため、現地調査の期間と輸出予定額によっては、他の計画との優先順位を調整したいと考えている。
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