本研究は観光地を文化を内包した地域ブランドとして捉え、観光人類学及びマーケティングの観点から理論的・実証的に考察することで、文化としての観光地を捉える新たな概念(イロケ、アジケ、ヒトケ)及びその測定尺度を提案するとともに、魅力の形成・維持において重要な役割を果たす要因(コントロール力、地域文化力)の違いによる魅力の強固性の差異を理論的・実証的に明らかにすることを目的としている。そのため、前年度に続き、本年度は国内では長崎を中心に、異文化性を活用した長崎の観光魅力づくり、観光戦略とプロセスについて研究し、異文化性を活用した観光価値の創出と観光戦略の構築の方向性を明らかにした。海外ではフランスの南部ニースの周辺及びモナコなどの観光地において、自然及び人工的な施設などの物理的環境、名産品などの地域資源や参加者に関して現地調査を行った。これらの研究調査を通して、以下のことを実証し明らかにした。文化としての地域の魅力を生み出し、維持するコントロール力や地域の文化力は2つの要因が結合することによって規定される。つまり、①外来者(観光客)を吸引する価値物;-観光の十分条件としての、各種の地域資源の編集及び創出を通じて形成される価値物である。②外来者に対する寛容性――観光の必要条件としての地域文化である。そしてどちらの形成にも長期間を要するものであり、模倣されにくい長期的な競争優位の源泉となる。長崎やフランスニースなどの地域の魅力は、外来者を吸引する価値物の形成においては、空間的時間的アジケ(伝統)イロケ(文化融合性)を有する有形物や無形物を創造的編集し、歴史で醸成された外来者に対する寛容性(ヒトケ)、そしてより魅力的なものにするための組織能力や人材育成によって作り出されたと考えられる。調査結果は2015年10月に国内外の専門家を招聘し長崎大学多文化社会学部で開かれた研究会議に報告した
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