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2014 年度 実施状況報告書

近代産業遺産としての捕鯨の記憶ー捕鯨問題と文化多様性

研究課題

研究課題/領域番号 25570010
研究機関一橋大学

研究代表者

赤嶺 淳  一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90336701)

研究分担者 山口 未花子  岐阜大学, 地域科学部, 助教 (60507151)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード商業捕鯨 / 産業遺産 / 個人史 / ニューベッドフォード捕鯨博物館 / 小型沿岸捕鯨 / 高度経済成長 / 食の近代化
研究実績の概要

赤嶺淳は、ノルウェーにおけるミンククジラを対象とした商業捕鯨の実態について、オスロ大学・ニューベッドフォード捕鯨博物館を中心に資料収集をおこなうとともに、ノルウェーにおける鯨肉消費の実態調査をおこなった。その結果、ノルウェーにおける鯨肉消費は、①ロフォーテン諸島での鯨肉消費が多い一方、①ノルウェー全体としては戦後の復興期における「牛肉の代替品」的な位置づけを得ていること、③ノルウェーの捕鯨は、タラ漁とニシン漁との関係性において理解すべきであることを確認した。また、商業捕鯨と調査捕鯨において砲手や解剖長を経験した人びと、鯨肉専門店で鯨肉を小売りしてきた店主など、捕鯨産業関係者計4名の個人史を採録することができた。捕鯨関係者の聞き書き研究分担者の山口未花子(岐阜大学地域科学部・助教)は、小型沿岸捕鯨会社の社員や捕鯨関連業者を輩出する宮城県石巻市牡鹿半島十八成浜における例祭について調査を実施するとともに、カナダ、ユーコン準州において鯨類、とくにシャチの表象について調査研究をおこなった。研究協力者の櫻井敬人(太地町歴史資料室学芸員・ニューベッドフォード捕鯨博物館顧問学芸員)は、ミスティック・シーポートが所蔵するCharles W. Morgan号が修復され、元の母港ニューベッドフォードに廻航されるのに期を合わせて同市を訪問し、記念イベントのひとつである捕鯨史シンポジウムにおいて、John Mungこと中濱万次郎とアメリカ捕鯨の関係について講演した。またニューベッドフォード捕鯨博物館が新設を計画しているJapan Gallery(仮称)の展示について、同館館長James Russell氏ならびに学芸員Christina Connett氏と協議し、日本関係資料に関する調査を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

海外調査と国内調査と、バランスよく、おおむね順調に進展している。海外調査については、櫻井が、米国のニューベッドフォード捕鯨博物館と「産業遺産としての捕鯨」共同研究を推進し、米国における日本の捕鯨についての関係史料を渉猟できていることは、今後の研究の発展性からも、高く評価できる。赤嶺も、ノルウェー政府代表として国際捕鯨委員会に出席しているLars Walloeオスロ大学教授と同科学委員のArne Bjorge博士とノルウェーにおけるミンククジラ漁についての情報収集をおこない、次年度(平成27年度)のフィールドワークの準備をおこなった。さらにオスロ地域における鯨肉流通と消費に関する調査も実施した。また、国内調査においては、赤嶺と山口が、それぞれ捕鯨関係者の聞き書きを実施しており、捕鯨の関連技術の継承だけではなく、捕鯨産業関係者のライフストーリーを日本社会全体の変容のなかで位置づけるべく、解釈をおこなっているところである。

今後の研究の推進方策

最終年度の平成27年度は、①国内における捕鯨関係者の個人史の採録とその編集をつづけ、将来的に基盤研究へ申請すべく、問題をより広範な視点から捉えることができるよう、努力する。②赤嶺は、平成27年7月までに捕鯨関係者6名の個人史の編集を終え、単行本化すべく平成27年12月に脱稿する予定である(出版社と契約済み)。③山口は、平成26年度にひきつづき、鮎川浜(石巻市)にて、捕鯨関係者の個人史の採録をおこない、オーラルヒストリー・アーカイブの構築を試みる。④櫻井は、平成26年度につづき、米国のニューベッドフォード捕鯨博物館との「産業遺産としての捕鯨」についての共同研究を継続する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Alternative product forms, consumer packaging and extracted derivatives of tropical sea cucumbers2014

    • 著者名/発表者名
      PURCELL, Steve, Poh Sze CHOO, Jun AKAMINE, and Michael Fabinyi
    • 雑誌名

      SPC Beche-de-mer Information Bulletin

      巻: 34 ページ: 47-52

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ロイ・チャップマン・アンドリュースの日本と朝鮮での鯨類調査と1901-1910年の日本周辺での行程2014

    • 著者名/発表者名
      宇仁義和、ロバート・ブラウネル、櫻井敬人
    • 雑誌名

      日本セトロジー研究

      巻: 24 ページ: 33-61

    • 査読あり
  • [学会発表] Shark Town: Kesennuma’s Taste for Shark and the Challenge of a Tsunami2014

    • 著者名/発表者名
      Akamine, Jun
    • 学会等名
      Food Heritage, Hybridity, and Locality Conference
    • 発表場所
      Brown University (Providence, USA)
    • 年月日
      2014-10-24
  • [学会発表] Conserving Marine Biodiversity for Cultural Diversity: A Case for Sea Cucumbers among Bajau Societies2014

    • 著者名/発表者名
      Akamine, Jun
    • 学会等名
      Borneo Research Council 2014
    • 発表場所
      Universiti Malaysia Sabah (Kota Kinabalu, Malaysia)
    • 年月日
      2014-08-05
  • [学会発表] Great Forbidden Fish: Manjiro and Whaling Rights in 19th Century Japan2014

    • 著者名/発表者名
      Sakurai, Hayato
    • 学会等名
      the 38th Whaling History Symposium
    • 発表場所
      New Bedford Whaling Museum (New Bedford, MA, USA)
    • 年月日
      2014-07-02
  • [図書] The Sea Cucumber Apostichopus japonicus2015

    • 著者名/発表者名
      Akamine Jun, Yucen Bai, Muyan Chen, Fei Gao, Jean-Francois Hamel, Seonggul Hong, Yao Huang, Jong Yong Ho, Chenggang Lin, Guangbin Liu, Jinxian Liu, Shilin Liu, Quan Liu, Alessandro Lovatelli, Yuze Mao, Annie Mercier, Yang Pan et al.
    • 総ページ数
      454 (399-421)
    • 出版者
      Elsevier
  • [図書] 展示する人類学――日本と異文化をつなぐ対話2015

    • 著者名/発表者名
      高倉浩樹、落合雪野、水谷裕佳、山口未花子、伊藤敦規、久保田亮、山崎幸治
    • 総ページ数
      272 (57-79)
    • 出版者
      昭和堂
  • [図書] アジアの自然と文化4 イモ・魚からみる東南アジア――インドネシア・マレーシア・フィリピンなど2014

    • 著者名/発表者名
      落合雪野・赤嶺淳
    • 総ページ数
      51
    • 出版者
      小峰書店
  • [図書] Rethinking Asian Food Heritage2014

    • 著者名/発表者名
      Sidney Cheung, Akamine Jun, Casey Man Kong Lum, Yi Chieh Lin, James Farrer, Serizawa Satohiro, May Y.H. Chang, Siumi Maria Tam, Mohsina Mukadam, Matsukawa Kyoko, Nir Avieli, Michael Hitchcock
    • 総ページ数
      313 (107-127)
    • 出版者
      Foundation of Chinese Dietary Culture
  • [図書] ナマコ漁業とその管理――資源・生産・市場2014

    • 著者名/発表者名
      廣田将仁、赤嶺淳、江口勝久、牧野光琢、五嶋聖治、成田正直、若林克典、松尾みどり、浜野龍夫、山名裕介、堀正和、吉田吾郎、浜口昌巳
    • 総ページ数
      326 (1-26)
    • 出版者
      恒星厚生閣社
  • [図書] 東南アジア、水産物貿易のダイナミズムと新しい潮流2014

    • 著者名/発表者名
      山尾政博、赤嶺淳、山下東子、鳥居亨司、天野通子、Achmad Zamroni
    • 総ページ数
      217 (165-185)
    • 出版者
      北斗書房
  • [図書] 海を越える太地2014

    • 著者名/発表者名
      櫻井敬人
    • 総ページ数
      104
    • 出版者
      太地町歴史資料室
  • [備考] Balat研究室

    • URL

      http://www.balat.jp/

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公開日: 2016-05-27  

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