研究課題
赤嶺淳は、ノルウェーにおけるミンククジラを対象とした商業捕鯨の実態について、オスロ大学・ニューベッドフォード捕鯨博物館を中心に資料収集をおこなうとともに、ノルウェーにおける鯨肉消費の実態調査をおこなった。その結果、ノルウェーにおける鯨肉消費は、①ロフォーテン諸島での鯨肉消費が多い一方、①ノルウェー全体としては戦後の復興期における「牛肉の代替品」的な位置づけを得ていること、③ノルウェーの捕鯨は、タラ漁とニシン漁との関係性において理解すべきであることを確認した。また、商業捕鯨と調査捕鯨において砲手や解剖長を経験した人びと、鯨肉専門店で鯨肉を小売りしてきた店主など、捕鯨産業関係者計4名の個人史を採録することができた。捕鯨関係者の聞き書き研究分担者の山口未花子(岐阜大学地域科学部・助教)は、小型沿岸捕鯨会社の社員や捕鯨関連業者を輩出する宮城県石巻市牡鹿半島十八成浜における例祭について調査を実施するとともに、カナダ、ユーコン準州において鯨類、とくにシャチの表象について調査研究をおこなった。研究協力者の櫻井敬人(太地町歴史資料室学芸員・ニューベッドフォード捕鯨博物館顧問学芸員)は、ミスティック・シーポートが所蔵するCharles W. Morgan号が修復され、元の母港ニューベッドフォードに廻航されるのに期を合わせて同市を訪問し、記念イベントのひとつである捕鯨史シンポジウムにおいて、John Mungこと中濱万次郎とアメリカ捕鯨の関係について講演した。またニューベッドフォード捕鯨博物館が新設を計画しているJapan Gallery(仮称)の展示について、同館館長James Russell氏ならびに学芸員Christina Connett氏と協議し、日本関係資料に関する調査を実施した。
2: おおむね順調に進展している
海外調査と国内調査と、バランスよく、おおむね順調に進展している。海外調査については、櫻井が、米国のニューベッドフォード捕鯨博物館と「産業遺産としての捕鯨」共同研究を推進し、米国における日本の捕鯨についての関係史料を渉猟できていることは、今後の研究の発展性からも、高く評価できる。赤嶺も、ノルウェー政府代表として国際捕鯨委員会に出席しているLars Walloeオスロ大学教授と同科学委員のArne Bjorge博士とノルウェーにおけるミンククジラ漁についての情報収集をおこない、次年度(平成27年度)のフィールドワークの準備をおこなった。さらにオスロ地域における鯨肉流通と消費に関する調査も実施した。また、国内調査においては、赤嶺と山口が、それぞれ捕鯨関係者の聞き書きを実施しており、捕鯨の関連技術の継承だけではなく、捕鯨産業関係者のライフストーリーを日本社会全体の変容のなかで位置づけるべく、解釈をおこなっているところである。
最終年度の平成27年度は、①国内における捕鯨関係者の個人史の採録とその編集をつづけ、将来的に基盤研究へ申請すべく、問題をより広範な視点から捉えることができるよう、努力する。②赤嶺は、平成27年7月までに捕鯨関係者6名の個人史の編集を終え、単行本化すべく平成27年12月に脱稿する予定である(出版社と契約済み)。③山口は、平成26年度にひきつづき、鮎川浜(石巻市)にて、捕鯨関係者の個人史の採録をおこない、オーラルヒストリー・アーカイブの構築を試みる。④櫻井は、平成26年度につづき、米国のニューベッドフォード捕鯨博物館との「産業遺産としての捕鯨」についての共同研究を継続する。
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SPC Beche-de-mer Information Bulletin
巻: 34 ページ: 47-52
日本セトロジー研究
巻: 24 ページ: 33-61
http://www.balat.jp/