平成26年度、主に中国洞庭湖日本住血の流行地域およびラオスのメコン住血の流行地域で現地調査を行ってきた。調査結果は、両地域住民の野外排便行動の異なる要因を示した。 まず、中国の洞庭湖地域について説明する。1990年代までに、地元政府と住民の努力によって、日本住血吸虫症の罹患率は大幅に低下してきたが、近年急速にリバウンドする傾向があった。調査では、二つ要因を明らかにした。第一に、経済活動の活発化によって、外来の漁民と砂採取労働者による湖での排便行動である。これらの関係者は、住血の知識を持ってなく、長時間水辺生活の中に、住血吸虫症を感染し、そして住血吸虫の虫卵を糞便経由で水中にばらまいた。第二、換金用牧畜活動によるものである。現地政府は地元住民の水辺生業活動を抑えるために、いわゆる「退耕還湖」(水田を湖に戻す)政策をとってきた。稲作の代わりに、地元政府は、渇水期に「草原」となった湖面を利用した牛放牧を推進してきた。これらの政策によって、住民の経済収入を向上させたものの、住血吸虫症の存続も寄与してきた。それは、牛は「草原」の水溜りで住血吸虫症感染、そして「草原」での排便による結果である。元々、住血吸虫症をコントロール一環として導入された政策は、住血吸虫症の存続に寄与している重要な要因となるのは、想定外であり、今後どのように動物の排便範囲の調査は中国での住血吸虫症コントロール重要な課題となっている。 また、ラオス調査で解明したのは、住民の野外排便行動はおもに集落と農地遠く離れているによることである。集落にトイレを作っても、農地で農作業している住民は野外で排便を避けられないことがよくあるからである。如何に「安全な」野外排便をとるのは、ラオスでの重要な課題である。 最後に、両地域の調査によって、野外排便の調査法を確立した。現在は次世代の調査法に向けて、開発の準備を進めているところである。
|