研究課題/領域番号 |
25570017
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 和佐 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (90324954)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域自治組織 / 女性 / 農業委員 / 地域存続 / 地域共同管理 / 混住化 / 自治体合併 / 共同性 |
研究概要 |
方法論の試行が本年度における主要目的であった。それを精力的に行なった結果、以下のような成果が得られ、理論構築への道筋を得ることができた。 1、ダム生活再建地、入会地、合併自治体自治振興区、戦後開拓地、リゾート開発地、河川利用地、新興住宅地、都市・まち場といった地域特性を方法論的に取り入れることにより、「地域の壁」が一義的なものではなく、多義的な要素を含むものであることを発見できた。 2、女性の意思決定の場への参画の有無、女性地域リーダーと男性地域リーダー、新住民と旧住民、NPOと地縁団体、農地の所有・非所有、入会・水利などの権利の有無、自治体合併経験の有無といった対比的に位置づけることができる対象・対象者の調査において、その対比性を明らかにするための方法として、まちづくり・地域自治に対する指向、世代交代、職業移動などが有効であることを発見した。 3、上記の対比的関係にある両者の間にあるものとして、「壁」ではなく、「距離」であるかもしれないとの示唆を得た。そうしたときに、何と何との、それのどのような距離の大きさが、政治的意思決定の場への参画に影響するのかを考えていく必要がある。「壁」を想定すると同時に、「距離」ということも念頭に調査研究を展開することによって、理論構築の可能性を拡げることができる。 4、自治体合併のあり方やそれに伴う地域自治の枠組みの変容に注目した結果、「地域の壁」を考えるときのもうひとつ重要な視点として「壁の再編」が想定できることも明らかになった。その再編によって意思決定の場への参画のあり方に変化が見られるとすれば、地域側の論理あるいは地域住民の意識レベルに壁が生じるとだけ考えることはできず、同時に外からの構造的枠組みの変化がもたらすものについても考えていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
女性の政治的意思決定の場への参画を阻む「地域の壁」形成のあり方について明らかにするための方法論として、農村社会における地域性・共同性に注目し、その基層に土地(農地)・米作と、それの維持・存続への責務意識があると仮定した。本年度は、この枠組みに準じた現地調査を行ない、方法論の妥当性の検証及び総合的観点からの知見を析出することを目的とした。具体的には、農業地域ならびに比較対象地域としての林業地域、漁業地域、新旧住民混住地域等に赴き、土地がもつ歴史性や生業の違い、移住者等に注目したデータ収集を行なった。 平成26年度の調査計画に支障が出るおそれがあったため、翌年度分の助成金の申請をしなかったこともあり、本年度は助成金不足が生じたが、各連携研究者が自費にて調査計画以上に現地を訪れ調査を実行した。また、研究初年度ではあったが、複数のメンバーが関連学会において、得られたデータ分析結果の考察を仮説的に提示することによって意見を得た。それを研究会に持ち帰り、議論することにより、今後の調査研究計画の精度を高め、次年度の調査研究の成果をより確実なものにできる見通しを立てることができた。 以上のように、全研究メンバーが役割分担に応じて調査研究計画を実行したことにより、その調査研究成果を総合したときに、単に方法論の妥当性が検証できたのみならず、最終的な理論構築のための知見が得られたことをもって当初の計画以上に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
方法論の妥当性がほぼ検証されたと言えるため、主要調査地のみならず比較対照地域も含め、さらにインテンシヴな調査を実行する。また、方法論の展開とともに、得られた知見をふまえ理論化に向けて概念整理が必要である。学会・学術誌等において最新の研究成果の収集につとめると同時に、研究会において議論を深めながら、関連学会において試論を発表することによって専門的見地からの意見収集につとめ、知見のエラボレーションを進め、有効な概念の創出をはかる。調査研究成果は、研究者に対してのみならず、講演や市民講座等を通して一般にも問う機会を得るようにし、研究成果の社会的有益性を高めるように努める。 研究メンバーの1名が、産休・育休に入り、その間は現地調査の実施が困難となる。しかし、分担している調査研究を平成25年度中に進め、また議論も深めていることから、この間は文献・資料のレビューやこれまでの調査結果の整理・考察を進めることにより3年間という研究期間内において支障は生じず、復帰後には当初の計画どおりの成果を出せる予定となっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度最後の支出となった調査旅費に残が出たため。 次年度も調査旅費の支出が中心となるため、旅費に加える計画である。
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