最終年度である本年度は、事例対象地域の補足調査によって、これまでに得られた知見の検証を行ないつつ、研究成果の総合化を目指した。そのため研究会を通じて議論した内容を学会にて報告し、得られた意見を検討した結果、最終的に下記が明らかとなった。 第1に、異質なものが関係をもとうとしたときに、「地域の壁」が形成されるという点である。新旧住民間の葛藤という側面は、これまでも混住化論が指摘してきた問題と同様の意味をもつ。しかし、壁をめぐっては、壁の内側にいる者と外側にいる者との両者が壁を認識する場合と、片方が認識する場合とがある。しかも、必ずしもマイノリティ側が壁を認識するばかりではないことは、注目に値する。 第2に、時間が、世代という壁を形成するという点である。対立・葛藤にのみ注目して壁の概念化をはかっていた際には、とらえられなかった側面である。壁をめぐる地域住民間の関係性は、地域という空間のみならず、時間軸によってもとらえる必要がある。 第3に、あえて壁をつくる場合もありうるという点である。地域の歴史的文化的文脈に埋め込まれている壁は、男女、新旧住民を問わず、壁の中にいる者にとっては価値あるものであった。その共有されている価値観が地域アイデンティティを形成しており、そこに異質なものが関係をもとうとしたときに、「地域の壁」が立ちはだかるのである。 第4に、この壁の存在は、コミュニティを顕在化させることにつながるという点である。このことは、解体的傾向にある地域社会の維持・存続という観点によれば、必ずしも壊さなくてもいい壁もあるのかもしれないという新たな課題を浮かび上がらせる。問題となるのは、壁の中のあり方なのかもしれない。意思決定の場への参画の義務化をはかるとき、このことが重要な論点になると考えられ、今後、研究を深化させることによって慎重に議論していく必要がある。
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