研究実績の概要 |
本研究の目的は、スコットランド、スリランカ、日本の3か国の国際比較に基づき、学校教育における障害のある女子の特別な教育的ニーズと必要な配慮について、ジェンダーの観点から明らかにすることである。平成27年度の研究活動は、(1)スコットランドにおける障害、ジェンダー、教育に関する先駆的研究者の著作物の文献的研究(2)スリランカにおける障害、ジェンダー、教育に関する現地調査、(3)日本の大学生を対象とした障害、ジェンダー、教育に関する意識調査の3つに分けられた。また、研究成果のくるみ製本を出版した。 最初に、スコットランドで教育社会学の観点から障害者教育を研究するエジンバラ大学のS.リデルに焦点をあて、障害、ジェンダー、教育の交点に関する示唆について文献的検討を行った(古田, 2014)。さらに、スコットランドの障害者の教育の制度について報告した(古田, 2015) 次に、スリランカにおいて、障害、ジェンダー、教育に関する面談調査を実施した。今年度焦点をあてたのは、全国統一高等学校修了試験に合格し高等教育を受けた経験のある障害者であった。その結果、これらの障害者の中で女子であることで行動に制限を受けた経験があるととらえている女性はいないものの、障害のない女子と同様の性役割を内面化した行動が見られることを明らかにした。この研究成果は、くるみ製本の第6章を構成している。スリランカに関しては鹿毛理恵氏、島野涼子氏の参加を得て、女性、障害の領域からの知見を積み重ねることができ今後の研究発展に向け有益なな収穫が得られた。 最後に、日本の大学生の障害とジェンダーに関する意識を明らかにする調査を実施した。同種の調査がない中で今後の研究の蓄積に向けた基礎的データとして活用することができると考える。この研究成果は、くるみ製本の第7章を構成している。
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