研究概要 |
平成25年度は、わが国では実例も議論も乏しい対抗的モニュメントについて、欧米の文献等を参考にリストアップを行うとともに、関連する資料および研究文献の収集・検討を行った。対抗的モニュメントの意味規定については、既知の事例をもとに暫定的かつある程度幅のある作業仮説を立て、その規定の妥当性については、検討を進めるなかで再考することにした。 文献資料の収集と並行して先行研究の検討を行い、まず、ホロコーストメモリアル研究で知られるJames E. Youngの代表的著作At Memory's Edgeで取り上げられているHosrt Hoheisel, Micha Ullman, Christian Boltanski, Rachelwhiteread, Renata Stih and Frieder Schnock, Jochen Gerzらについて、そのカウンターモニュメンタルな作品・企ての内容とYoungによる論評の双方を検討した。とくにドイツの事例に焦点化した研究であるが、ホロコーストに限らず、モニュメント作成の機縁となった出来事の歴史的・社会的インパクトのもつ特殊性と普遍性を切り分けつつ両者の連関について考えていくことの重要性とともに、出来事の過去性と現在性が作品・企てのなかでどう関連づけられているのかを確認する必要性があらためて浮き彫りになった。 予定していた現地調査の内、ロスアンゼルス訪問は校費による調査と関連付けて行えたので、総じて言及されることの少ないニュージーランドのミュージアムやパブリックアートにおけるオルタナティブな潮流を探ることを加えた。また、国内に関しては、スケジュールの都合で沖縄調査は見合わせ、中之条ビエンナーレなどアートフェスティバルに見られるカウンターモニュメンタルな作品に注目して資料収集を行った。分析は引き続き次年度以降に行う予定である。
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