「存在の謎」(なぜ無ではなく何かが存在するのか)をめぐる現代の論争状況を見ると,分析哲学において存在論が完全に復権したことが分かる。復権の原因は,(1)検証原理の持つ困難,(2)クワインの全体論,(3)ストローソンの記述的形而上学,(4)クリプキの固定指示論の4つである。しかし,科学主義者クワインの貢献は限定的であり,ストローソンが概念の構造を探究したのに対し,現代の存在論は実在の構造を探究し,「アプリオリかつ可謬的」という特徴を持つ。現代の存在論は実在論的であり,経験科学に深く関わりつつも,経験科学から自立している。
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