研究課題/領域番号 |
25580006
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
河野 哲也 立教大学, 文学部, 教授 (60384715)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 哲学実践 / 哲学対話 / 子ども哲学 / 哲学カフェ / 企業内哲学対話 / クリティカル・シンキング / 道徳教育 / 批判的思考 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の哲学界に、「哲学実践」と呼ばれる分野を体系的に導入し、ひとつの実践的な学問分野として確立するための準備作業を行うことを目的とする。平成26年度は、以下の活動を行った。 1, 子どもの哲学の理論的・実践的導入書の刊行:子ども哲学の背後にある哲学観、社会観、児童観、発達観を平易に説明し、現在日本で行われている実践を具体的に紹介した単著『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』(河出書房新社)を刊行した。また、リップマンの主著『探求の共同体』(玉川大学出版部)を刊行した。2, 子ども哲学の新聞紙上対話:毎日子ども新聞日曜版において毎週、「子ども哲学カフェ」のコーナーを担当し、土屋陽介氏、村瀬智之氏とともに紙上哲学カフェを執筆し、子ども哲学の普及に努めた。3, 哲学対話普及のためのNPOの設立:哲学対話を普及させるために、NPO「こども哲学おとな哲学アーダコーダ」というNPOを立ち上げ、哲学実践の紹介とファシリテイター養成のためのプログラムを共同開発し、講座を開催した。4, 対話の評価に関する学会発表:哲学対話の教育学的効果をどのように測定すればよいかについての研究を心理学者とともに行い、国際哲学実践学会(ベオグラード)で研究発表をした。5, 東日本大震災被災地域での哲学対話の推進:震災被災地域での哲学カフェの模様を国際哲学実践学会で発表し、立教大学による陸前高田・大船渡の支援活動に絡め、図書館や中学での哲学対話の実施を推進した。震災後の地域の問題や未来について自由に話し合う場を設けた。6, 企業内哲学対話の推進:企業内で、企業倫理、人生と仕事、リーダーシップ、ビジネスの基本理念などのテーマについて哲学対話を行うためのプログラムを、立教大学ジビネスデザイン研究科の宮下篤志兼任講師、及び、企業教育の専門家とともに開発し、パイロット講座を複数回、開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理論的・実践的紹介書や翻訳書を上梓、毎日小学生新聞紙上の「子ども哲学カフェ」を毎週執筆し、学校や幼稚園・保育園などを始め各地から問い合わせをうけ、子どもの哲学という分野をかなり広範な読者に伝えることができた。また、哲学対話普及のためのNPOを立ち上げ、子ども哲学や哲学カフェの紹介講座やファシリテイター養成講座を開くことができた。国際学会において複数の発表を行うことができた。企業内哲学対話についてのプログラムを開発し、この分野の導入に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はとくに以下の活動を中心に行う予定である。 1, 「哲学実践連絡会」の立ち上げ:哲学実践の実践者や研究者、教育者が相互に連絡を取り、実践活動の報告や情報交換ができるように「哲学実践連絡会」を立ち上げる。2, 対話の評価に関する学会発表:哲学対話の教育学的効果の評価について「国際子ども哲学会(ICPIC)」(7月、バンクーバー、カナダ)で研究発表をする。3, 企業内哲学対話の推進:企業内哲学対話を推進するために、専門家であるヴィクトリア・チェルネンコ氏を招聘し、模擬講座を行う。計十数回の企業内哲学対話を実施する予定である。4, 子ども哲学のさらなる推進:広島市教育委員会のグローバル教育推進(SGH)プログラムの一部として、哲学対話を実践し、また高校教員にその方法論を伝授する。5, 被災地支援としての哲学対話;引き続き、立教大学による陸前高田・大船渡の支援活動に絡め、陸前高田図書館や大船渡中学での哲学対話を実施する。今年度分残額は次年度分とあわせ、主に書籍資料代に割り当てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍を購入する予定であったが、残額を超えるために来年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は次年度分とあわせ、主に購入予定だった書籍資料代にあてる予定である。
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