研究実績の概要 |
本研究の目的は,ミャンマー現地僧院に所蔵される南方仏教に係る貝葉古写本・折本写本を電子的に撮影して記録・保存してデータを公開し,以て当該分野の研究を促進することにある。この目的のため,代表者はパーリ文献協会(PTS)・W.Pruitt博士と共同現地調査を行ってデータを集積し,次いで本務校に所属する情報工学者と協力関係を構築し,その助力を得てデータ整理と公開のための手法を検討した。 調査地のミャンマー南部・モン州・タトン市のSaddhammajotika僧院では,今後の自立的写本管理維持が可能となるよう,現地信者組織に写本取扱い手法を教授・訓練し,図書室内を整理しつつ,写本情報収集・整理業務を行った。こうした現地支援を伴う調査研究は,相当に準備事項が複雑だが,現地との信頼関係を増進し,将来の協同を拡大し得る点で極めて実り多いものと思われる。この調査の状況を雑誌論文3報で報告し,簡易写本カタログ:PRUITT/ KASAMATSU/ RUIZ-FALQUES/ KAWASAKI/ OUSAKA “Manuscripts in the U Pho Thi Library, Sadhammajotika Monastery, Thaton, Myanmar”(Chuo Academic Research Institute Tokyo 2014, Philosophica Asiatica Series 1)を公刊した。また,収集した写本に基づく研究として,中世スリランカ撰述の仏伝詩Jinalankara研究を試行し,一部を雑誌論文として発表した。 本研究に際して,情報工学的手法を援用した「電子ブック」作成手法を確立した。これは,他の同様の写本調査計画にも援用できるものと考えられる。既に概要を雑誌論文で発表したが,現在詳細なマニュアルを整備して今秋にも公刊する予定である。電子ブック・サンプルによるデータベース化も進展中であり,これについてはweb pageを用意した(http://hirose.sendai-nct.ac.jp/~ousaka/)。
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