研究課題/領域番号 |
25580014
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
朴 鍾祐 神戸大学, 留学生センター, 教授 (60304078)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近代国家 / 自国中心主義 / 土俗性 / 草莽運動 / 平田国学 / 東学運動 / 民衆宗教 / 天道教 |
研究実績の概要 |
本研究のテーマは「近代化における土俗宗教とナショナリズムの相関関係に関する日韓比較研究」であるが、とくに平成27年度に研究に重点をおいているのは日韓両国の土俗宗教の形の思想化への道のりを探り、それに表される特徴を比較分析することである。とりわけ近代化における近代国家の芽生えは、自国の国家像に強い自国中心的に意識を高揚させる力が加わる格好となるが、その中心には思想的根拠となるものを追求する様相を呈する。このような一連の動きは、日韓両国において類似性をもって思想的連鎖が起こるのだが、そのバックグラウンドとなるものが政治的背景やまた外国とのつながりと広がりの点、さらにその後の国際的政治的状況の中で相当異なる様相が展開される。ただし、それぞれの近代国家への移行の過程においてそれぞれ危機意識の発露は、両国の自国を守ろうとする意識においては共通点もみられる。 本研究においては、国内的政治の動向や国外的に外交の動きがもたらす自国意識の高揚は、国民国家の意識の中で潜在的に発芽している民衆意識とも大いに関係をもっていることにも着目したい。このような動きの求心力として民衆による思想的動きは、平田国学にも顕著に現れているように草莽運動がその代表的なものである。一方韓国では挑戦末期に強く台頭する農民による東学運動は、西学に対抗する思想体系の武装を目的とするものとして、天の道の教えを自称する形で体系化を目指すものである。その共通性においては、民衆への広がりや浸透力は、新たな思想を生み出すだけの原動力をもちつつも、目下、政治的対抗や外部的抵抗においては民衆勢力の限界もあり、全面に国家を牽引する力までは及ばないのも共通点である。しかしながら、自国中心主義は国家的権力よりも民衆による自発生もたらした思想の連鎖は大いに散見できるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
明治維新と国学の関連性に関しては多くの研究が進められているが、その詳細な点においてはまだ究明されてない側面も多く残されていると言っても過言ではない。例えば、平田国学の幕末の社会的広がりは凄まじいものであり、その資料の数も広範囲に及んでいることもある。 また韓国側にしても東学運動においても多角的な研究が行われているが、民衆宗教としての思想史的展開の側面においてはなかなかその資料の全貌をつきとめることがまだまだ難しい状況である。 このように網羅すべき研究の範囲と領域の広がりが、当初の研究の展望よりもかなり広範囲であることが研究を進行するにつれて認識されてきたものである。また研究内容や比較対象のテーマにおいてその階層が必ずしも一致することもやや難しい点もある。そのようなものは次の研究課題としても残されるものでもあるが、いずれにせよ当初の目的のテーマの範囲でその一定の結論を見出せたらと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において今後の推進すべき方策としては以下のように考えている。 1)論点と対象のしぼり作業を上げられるが、今までは全体像を見出すために、なるべく広範囲のものを見ておく必要がある点で研究の範囲を広げてきたが、一定の結論を出すためには、その共通点を突き止めつつ、その方向性を定めつつ論点をしぼり、結論に結びつける作業を進行させること 2)日韓比較においては、ナショナリズムの芽生えの意識を高揚させた思想的原点に重きをおいて、比較を行うようにする。研究の当初の方法としては、民衆宗教の比較や、国家意識と民衆宗教の関連性など多方面に渡って、比較の範囲を広げてみたが、論点のずれや階層の相違がみられる点において、その明確な論点整理が難しくなることから、比較論点の整理を行う必要があると考えている。 上記のような二点において研究範囲の絞り込みとともに比較対象の内容を明確に打ち出すことを今後考えていくことにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際研究会への参加が予定したものに参加できなかったことに伴う旅費とまた研究報告書の作成のための費用を支出していないことから次年度への使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に成果発表としての国際研究集会に参加することに伴う旅費の支出と研究成果報告書をまとめることでかかる費用を計上したいと考えている。
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