研究テーマである「近代国家おける土俗宗教とナショナリズムの相関関係に関する日韓比較研究」の最終年度となり、とりまとめの研究となっている。土俗信仰の思想化への道筋をたどり、それに現れる特徴を比較分析することに重点をおいて進めてきた。 まず日本側において思想化のなかでもっと著しい現れるものとしては、自国中心主義と深い関連性を示すものとして「王政復古」が存在する。この思想の根幹をなす復古神道主義はその思想化に拍車をかけたのは平田篤胤の門下生たちによって「尊王攘夷」が具体的に現れる課程を明確に掲げることになる。その特徴としては、江戸国学にはみられない古道論がその中心に流れ、そこから宗教と関連性が現れるのが特徴である。後々神仏分離運動にもつながるものである。 一方韓国側としては、一番中心的に思想化の動きを見せたのは、「天道教」による運動、そこからさらに東学運動につながるものが大きな道筋を表している。天道教から強く押し出される東学運動の限界を乗り越えるために甑山敎が現れるが、その中では「神明」や「道術」といった宗教的色彩を強く呈する。 韓国側では思想化に取りこぼされたものを土俗宗教によって補われるような形で表出されることがその特徴である。ただ日韓の共通するものとしては、「西洋」もしくは「西学」に対抗する形で自国中心の思想が芽生えてくる共通のアジア的状況があったことなどが今回の研究を進める中で確認できたのである。
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