研究課題/領域番号 |
25580020
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
平山 洋 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教 (20244535)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 福沢諭吉 / 石河幹明 / 時事新報 / 井田進也 / 安川寿之輔 / 杉田聡 / 岩上安身 / 丸山真男 |
研究実績の概要 |
時事新報の社説1888年7月11日付から1894年1月27日付までをテキスト化した。また、1885年4月1日から1891年9月30日までの社説の起草者推定を行って、福沢諭吉執筆と173編抽出した。その結果は「『時事新報』社説の起草者推定-明治18年4月から明治24年9月まで-」(2015年3月静岡県立大学国際関係学部刊『国際関係・比較文化研究』第13巻第2号掲載)で公表している。 すなわち、当該期間テキスト化済み1086日分のうち728日分に福沢語彙(福沢に特有な語彙)が検出された。これらを福沢が一人で書いたとするのは多すぎるので、福沢直筆を抽出するにはもう一工夫が必要である。そこで以下のような操作を行った。 これら福沢語彙が検出できる728日分の社説1編に含まれる福沢語彙は、1語から7語まであった。そのうち554日分については1語ないし2語を含むのみで、そこに福沢直筆がないとは断言できないものの、別人の下書きへの加筆に福沢語彙が含まれていた可能性が高いであろう。逆に3語以上含まれている社説が174日分あった。その内訳は、7語を含むものが1日分、6語が4日分、5語が20日分、4語が40日分、3語が109日分である。中上川語彙を含む一日分を除いた173日分を暫定的に福沢起草の社説と見なすことにするが、もとよりその事実を客観的に根拠づけることはできない。また、福沢語彙が2語以下しか含まれていない直筆社説も当然あると考えられる。この線引きを行うことが井田メソッド使用にあたって必然的に伴う直感にもとづく絞込みということができる 当該期間に発表された社説2217日分のうち、すでに全集等に収録されているのは518日分で、それにこの173日分を加えると691日分となる。この合計で全体の約3割となるので、日々の社説を記者2名とともに執筆していた旨の書簡の記述とも整合するように思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、1882年3月から1898年9月までの198ヶ月分の社説を3年間でテキスト化し、かつ起筆者の推定を行うというものであった。2年間が経過した時点でのテキスト化の期間は148ヶ月分、また起筆者の推定については114ヶ月分が終了している。 テキスト化は74.7%、起筆者推定は57.6%実施済みということになる。テキスト化は予定以上の進度であるものの、起筆者推定はやや遅れているが、その判定は機械的に行えるので、テキストさえそろえばすぐに可能である。 以上により、最終年度に予定の研究を終了できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
起草者推定を実施して気づいたことだが、本年度分として抽出できた173編以外にも、直筆らしき社説は存在している。「衛生の進歩」(18891120)はそうしたものの一つである。福沢の署名入著作『修業立志編』(1898)に収められながら初出不詳だった本作は、今回の作業でその出典は明らかとなったものの、編中の福沢語彙は冀望1語だったため上記リストからは洩れている。 本研究では暫定的に福沢語彙3語以上を含む社説を福沢直筆社説とみなしているわけであるが、この方針は、抽出の純度を高めるのは有効であるとしても、福沢語彙2語以下のみ含んでいる福沢直筆社説をふるい落としてしまう結果を招きかねない。 実際、原稿が残存している社説について福沢語彙の含有状況を調べてみると、平均して2語程度であると分かる。つまり、本研究の方法では直筆社説であっても的確に選べないものが多くあるということである。現在のところ、語彙以外の方法によって抽出する方法は編み出されていない。 ともあれ、起草者語彙の選定がより洗練され、さらに文体による判別方法が確立されれば、今後その精度を高めることが可能となろう。
|
次年度使用額が生じた理由 |
社説のテキスト化作業が予定より早く進行したため、前倒しの使用を行った。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度の残額は11万円強となっているが、これだけでは残りの約50ヶ月分の社説を網羅的にテキスト化するのは不可能であるのは明らかである。そこでテキスト化する社説を絞り込むことによって、福沢健全期全体の社説をカバーする予定である。
|
備考 |
本研究は福沢諭吉(1835~1901)が主宰していた新聞『時事新報』(1882~1936)の社説の起草者を新たな方法論によって判別したうえ、その中から福沢由来の社説を選び出すことでジャーナリストとしての福沢の全体像を再構成する。
http://blechmusik.xii.jp/d/hirayama/kaken-2013/
|