研究課題/領域番号 |
25580023
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
中村 美亜 東京藝術大学, 音楽学部, 助教 (20436695)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 音楽 / 芸術 / 社会学 / アートマネジメント |
研究概要 |
今年度の成果を、本研究が設定した3つのフェイズごとに記す。 ①基礎調査…震災後13ヶ月間の新聞記事(河北、朝日、読売)を対象に音楽関連記事を抽出し、データベース化した。抽出記事は12,529件。その大半は、チャリティー・コンサート関連の記事だった。「音楽の力」「歌の力」という言葉が含まれる記事は205件。また「願いを込めて」「心を込めて」など、「~を込め」という言葉が頻出することもわかった(1657件)。本基礎調査から、音楽に情緒的な想いを投影する傾向が見えてきた。 ②研究交流や海外事例との比較分析…2011年のニュージーランド地震後の音楽活動を調査したオーストラリアの研究者(Shelley Brunt, RMIT Univ.)から研究報告を受けるとともに、関連研究に関する情報交換をおこなった。震災後のクライストチャーチでは、行政や音楽業界が音楽を「実務的」に「合理的」手段として用いていたことを知り、日本や東北の文化的特徴が浮き彫りになった。また、国内他大学等の関連研究会に参加し、情報共有・意見交換・経過報告発表をおこなった(立教大学:震災関連研究、一橋大学:トラウマとアート、理化学研究所:音楽と情動など)。 ③フィールドワーク…8月17~19日に仙台メディアテークで開催された「かさねがさねの想い2」(震災後、宮城県を中心に活動してきた様々なジャンルのアーティストが一堂に会するイベント)に参加した。震災を機に様々な音楽や芸術表現が生まれていることを実感する一方、それらの担い手は震災前も同様に表現活動をおこなっていたことがわかった。復興ソングの重要性を再認識した。12月21~23日には石巻を訪問。被災地の子供たちを対象とした身体表現ワークショップに参加した。主催の東京の研究グループは、震災後ほぼ毎月実施している。身体を用いる重要性、定期開催による効果を実感した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では25年度に「基礎調査を実施し、全体像をおおまかに把握しつつ、事例検討に着手する。 海外事例の検討や海外の研究者との意見交換は適宜実施する」としていた。上記「研究実績の概要」に記したように、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画にしたがって研究を継続推進する。25年度の基礎調査およびニュージーランドとの比較から、「音楽の力」や「願いを込める」という情緒的・精神的(スピリチュアル)な反応が東日本大震災後の特徴として浮き彫りになってきた。この点をさらに掘り下げるために、新たなデータを収集し、分析を深めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
26年4月の所属研究機関変更に伴い、1月以降、引継・移行業務や転居作業等が予定外に発生した。そのため、1月以降に予定していた研究活動及び支出が、次年度に繰り越しになった。 予算支出は繰り越されたが、研究は1月時点で予定より早く進んでいたため、進捗に大きな遅延はなく、次年度以降の計画の変更は必要ない。繰り越された予算は、予定外の所属機関変更に伴い生じた物品の購入や、26年度の研究充実のためにあてる予定である。
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