研究課題/領域番号 |
25580032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋爪 節也 大阪大学, 総合学術博物館, 教授 (70180817)
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研究分担者 |
高橋 京子 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (00140400)
伊藤 謙 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00619281)
横田 洋 大阪大学, 総合学術博物館, 助教 (50513115)
松永 和浩 大阪大学, 総合学術博物館, 講師 (90586760)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 博物学標本 / 大阪学 / 木村蒹葭堂 / 交遊ネットワーク / 大名と博物学 |
研究実績の概要 |
大坂の本草博物学者であり、文人画家である木村蒹葭堂(1736-1802)の博物学標本に関して、研究の基礎となる「巽斎捐因印譜」(東京都立中央図書館)など印譜四種の異動を整理調査した上で、辰馬考古資料館所蔵『蒹葭堂記記』『蒹葭堂雑記』『蒹葭堂甲申稿』『蒹葭堂日抄』『蒹葭堂箚記』『蒹葭随筆』『奇貝図譜』『薩州蟲品』やその他の新出資料を調査し、初期の資料である本草学資料「蒹葭堂草木写生」(杏雨書屋所蔵)と「桃花図」(神戸市立博物館所蔵)にも見られるように、一つの動植物標本に対する本草博物学者としての視点と、それを鑑賞絵画として描く文人画家としての視点の違いを考察した。 蒹葭堂が晩年に正式に入門した本草学者・小野蘭山からの来信を翻刻し、二人の本草博物学に関する問答の内容から、職業的学者とは立場をやや異とする大坂の町人学者としての学問研究のあり方を考察するとともに、物流の中心で商工業が栄えた「天下の台所」大坂の都市としての特性を研究する立場から、蒹葭堂の多彩なネットワークのあり方を、『薩州蟲品』『奇貝図譜』や「貝石標本」(大阪市自然史博物館所蔵)、「寄題蒹葭堂詩文」などの資料から検証した。このうち『薩州蟲品』は、薩摩藩主島津重豪から贈られた標本を写生した虫類図譜で、標本の名称には琉球などの現地名を用いるなど、データを忠実に記載していることが確認できた。こうした蒹葭堂の博物学標本のあり方から、町人学者として著名な蒹葭堂であるが、薩摩藩や土佐藩など有力な大名と博物学標本に関して親密な関係があったことを確認し、町人だけではなく武士階級も巻き込んだ18世紀後半の大坂の複雑で多様な知的状況と文化的背景を確認した。
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