私は長年、江戸時代花鳥画と博物学の関係について研究してきた。とくに近年では、花鳥画に関連する18世紀以降に生まれた新しい「画題」に関して研究を行っているが、その途上において次の点に気づいた。すなわち花鳥画とは、根本的に「ことば」と切り離すことができない絵画ジャンルであるということである。花鳥画のなかに暗喩として隠されたことばは、現代語の意味や現代文化の事象と直結しない場合が多い。本研究では、花鳥画と美人画の両方の絵画ジャンルに跨っている「美人と白鸚鵡」という伝統的主題が、19世紀以降の芸術家たちに如何に理解され、また彼らがそれを応用して如何に「新しい画題」創出へと繋げたかについて考察した。
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