平面を支持体とする視覚芸術においての視覚伝達プロセスは、①光源(照明or映像投影)、そして照らされる②支持体(スクリーン)のどちらかを差のない安定した状態を保つことでもう一方の差異をイメージとして伝達する。映像投影では②は単一色で統一させる必要があり絵画では逆に①を安定させなければ図像は見えない。本表現研究プロジェクトではどちらの過程も変化させる環境を作り出す。ここでは目線の場所や体験時間に応じて、目の順応具合も移ろう。絵画と映像の差分が照明の変化に応じて移ろい、さらに"見る"という能動性がイメージをインタラクティブに決定させます。 このシステムでは、画面に関わる光を繊細に制御する必要があるが、通常用いられるデジタル制御の照明機材やデータプロジェクタでは24bitカラー限界がある。特に暗部の階調において時間を伴う階調変化表現は暗所順応の速度に負け不連続性が見えてしまう。 この対策のため可変NDフィルターの電子制御を従来の調光可能なfullColorLED電球と組み合わせた独自システムを開発し非常に深い階調幅を実現させた。 また、大原崇嘉、柳川智之に協力を仰ぎ、照明バランスによって変化する画面の部分に応じたコントラストの強さを画像演算により数値化することで、見る行為とイメージの立ち上がりについての分析のきっかけを得た。 このような認知科学や生理学と色彩学を視覚芸術の分野に接続した実践、研究はまだ浅く。2013年度秋に東京芸術大学芸術情報センター内において行われた展示と最終年度末に京橋ArtSpaceKimuraにて行った「網膜思考展」での発表でそのような分野での実践と、この研究における可能性を示した。 同時にプロジェクトサイトに表現プロセス、研究の記録、作品の内容を公開している。
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