本研究は、近代文学の成立と新聞メディアとの関係解明を、近代日本の人文知の形成という観点から行うための基礎調査にあたる。研究対象は、19世紀末の明治日本で紙面に小説を掲載した最初期の新聞『郵便報知新聞』だが、文学主筆の森田思軒が掲載した作品のほとんどが翻訳小説であり、かつ原著不明という問題があった。そこで大英図書館を中心に文献調査を行い、結果、原著不明21作の内、13作を明らかにした。この基礎調査の過程で、思軒訳の新聞小説が後の近代文学的規範とは異なる選定になっていること、しかもそれが大英帝国の情報ネットワークのなかで再検討すべき課題であることを明らかにした。
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