研究課題/領域番号 |
25580058
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
吉田 司雄 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50296779)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文学一般 / 日本文学 / 大衆文化 / 忍者 / 探偵 / 国際研究者交流(韓国) / 国際研究者交流(台湾) |
研究概要 |
2013年12月1日に日本大学文理学部で開催された日本近代文学会12月例会「国際研究集会―日本近代文学のインターフェイス」で、海外共同研究者の兪在眞氏(韓国・高麗大学校)、陳国偉氏(台湾・国立中興大学)を招き、研究協力者の藤井得弘氏(北海道大学大学院生)をディスカッサントに加え、パネル発表「東アジア探偵小説史の展望と可能性」を行った。あわせて関連年表を加えた予稿集を刊行した。兪在眞氏の「植民地朝鮮の日本語探偵小説―金三圭「杭に立つたメス」を中心に―」は、植民地朝鮮での日本語探偵小説の流通と韓国語探偵小説への影響を視野に入れつつ、韓国人による日本語探偵小説について考察したものであり、陳国偉氏「本格ミステリが生み出した怪物―台湾ミステリ小説における日本的な科学想像と翻訳―」は、現代台湾ミステリ小説が日本の島田荘司の影響で怪物化した身体を次々と作り出し、多様かつ「不思議」な謎と犯罪トリックを生み出している状況について検討したものである。藤井得弘氏の「中国における探偵小説の土着化をめぐって―中国最初期の探偵小説創作を中心に―」は、中国の伝統的な土壌としての公案小説や傲骨『砒石案』(1908年)を例にホームズ物の影響について考察している。ここで出された個々の課題を組み合わせつつ、東アジア全域を視野に入れた探偵小説史の構築をどう考えていくのかが、本プロジェクトの今後の課題である。 また、忍者文化研究会の活動を継続し、論集の刊行に向けて着実な努力を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的に掲げたのは、「忍者」表象に関する国内研究者の共同研究の推進と、「探偵」表象に関する国際的な研究者ネットワークの構築であるが、後者については研究実績欄に記したように、日本近代文学会12月例会「国際研究集会―日本近代文学のインターフェイス」で海外共同研究者とのパネル発表を実現することで順調な第一歩を踏む出すことができた。今後は台湾や韓国でのシンポジウム等の開催可能性を模索していく。 しかし、前者については研究会活動そのものは継続できたものの、目に見える形で成果を示すところまで本年度は達しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き「忍者」表象に関する国内研究者の共同研究の推進と、「探偵」表象に関する国際的脱領域的な研究ネットワークの構築とを進めていくが、2014年度はまず夏に「日本探偵小説とメディア環境との相関性に基づく史的研究」(科学研究費補助金基盤研究採択課題、研究代表者・押野武志)を遂行する研究チームとの合同シンポジウムを北海道大学で開催し、そこを機に忍者文化研究会での研究成果の中間的な取りまとめに入る心積もりである。また、研究代表者は秋以降に台湾で開催される中興大学台湾文学研究所十周年記念シンポジウムに参加する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
忍者文化研究会の資料調査に伴う旅費やゲストスピーカーへの謝金として計上していた分を、2013年度は準備が整わず実施を先送りすることになったため。また、資料代として計上していた分は、本務校の別の研究費の支給を受け、それで賄うことができたため。 忍者文化研究会の活動を活性化させ、北海道でシンポジウムを開催するための旅費その他に充足させるほか、論集刊行に向けての資料収集等にも力を入れていきたい。
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