本年度は、昨年度までの成人およびう6-7歳児(小学1~2年生)を対象とした実験成果を更に発展させるべく、5歳児を対象に、複合語アクセント情報を用いた予測的処理に関する検討および、枝分かれ構造におけるピッチアクセント情報の解釈と、曖昧性解消にかかる処理偏向への影響に関する実験を行った。
複合語構造予測実験においては、名詞句はそれ自体が単独名詞という解釈と、名詞複合語前部要素という一時的多義性が発生しうる状況で、6-7歳児と同様、5歳児においても、複合語アクセント規則に則ったアクセント変化情報を利用して複合語処理が促進されることを示す結果を得た。ただし、子どもにおいては処理の速度そのものが成人に比べて遅くなるため、この効果が確実に「予測的な処理」であるかどうかという解釈については断定が難しいという課題が残った。この結果を国際学会(The Second International Workshop on Children’s Acquisition and Processing of Head-Final Languages (CAPHL 2016);The fourth Foreign Language Learning and Teaching Conference (FLLT 2016)(招待講演)で発表し、さらに国際雑誌(Language Learning and Development)に論文を発表した。
枝分かれ曖昧構造を持つ名詞句の解釈については、大人が、第二要素のピッチプロミネンスという情報を、右枝分かれ構造を示す、いわば構造レベルの手掛かりと解釈する傾向があることに対し、子どもにおいては、年齢が下がるについれてこれを構造でなくコントラストを示す情報であると解釈する傾向があることを示した。この結果を国際学会(The First International Conference on Theoretical East Asian Psycholinguistics (ICTEAP-1))で発表した。
|