研究課題/領域番号 |
25580089
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
吉成 祐子 岐阜大学, 留学生センター, 准教授 (00503898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 事態描写 / アイトラッキング / 認知プロセス / 構文 / 移動表現 / 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本研究は、人が事態をどのように認知し言語化しているのかを、従来の言語分析に加え、アイトラッキング装置を用いた視線分析を行うことにより、認知と言語表現の関連を実証的に検証するものである。 平成26年度は、実験データを収集し分析、さらに実験に改良を加えていく等の本実験の実施が中心となる年度である。前年度に行われたいくつかの予備実験の結果より、対象とする言語表現に関わる事象によって適切な実験刺激の形態(動画、静止画等)が明らかとなり、本実験の映像を選定することができた。ただし、当初の研究計画ではアイトラッキング装置を用いた本実験をすぐに実施する予定であったが、装置利用に関わる諸事情も含め、視線分析の基となる、事態認知時における言語表現の実態をまず明らかにする必要性を感じ、日本語だけでなく多言語との比較を通して、言語表現の個別性・普遍性を検討する基礎的検証を行うことにした。認知と言語表現の関連を検証する事態描写の研究、特に移動事象に関する言語実験を多言語で実施し、先行研究で指摘されてきた論点の検証を行った。さらに対象を第二言語習得にも広げ、研究を進めることができた。様々な学会で口頭発表、そして国内外の学会誌へも投稿し、研究の公表に力を入れた。視線分析の検証まで及ばなかったが、これらの研究結果を基にすることで、より詳細な認知プロセスの解明ができると考えている。 昨今、言語学の分野でもアイトラッキング装置を用いた実験研究が行われるようになってきており、国際学会に出席・発表した際には同様の研究を行う研究者との意見交換や、実験協力依頼をすることができた。本研究の目的の一つでもある、多言語での検証を進めていくためにも、今後も協同的な研究体制を整えていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、アイトラッキング装置を用いた予備実験を実施し、本実験に向けての実験映像刺激の精査や、得られたデータを分析し、その結果を言語学関連の学会で発表することにより、視線分析の有用性や新たな研究方法を提示することができた。しかし残念ながら、さらなる研究を進めていこうとする段階で、研究協力者の人事異動に伴いアイトラッキング装置や分析システムの利用が滞る事態となってしまった。そのため、本年度は新たな実験実施はできなかったが、これまでの実験で得られたデータ分析を中心に研究を進めるとともに、研究の方向性を再検討し、視線分析の基となる従来の言語分析を多言語や第二言語習得に広げた研究を進め、成果の公表にもつとめてきた。以上の状況から、当初の研究計画と異なるところもあるが、本研究の目的を遂行するための達成度として大きな遅れが生じたとは考えていない。来年度にはアイトラッキング装置を確保し、本実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は視線分析装置を用いた本実験の実施を中心に進めていく。昨今のアイトラッキング装置の軽量化やモバイル化等の改良はめざましく、様々な場所での実験実施が可能になっている。本研究の計画当初ではデスクトップ型の装置が主流で、実験室のような固定された場所での実験実施しか設定できなかった。本研究の初年度に実施した実験状況がまさにそれであり、実験参加者が限られてしまうという状況は否めなかった。それを解消するためにも、今、最新の装置を取り入れるいい機会であると考えている。来年度はモバイル可能な装置を購入し、様々な場所で様々な言語について実験を実施し、分析を進めていきたい。そのため、来年度の物品費の割合を増やし、研究協力者との打ち合わせはインターネットを利用したり、雑誌投稿を中心に成果発表を行うことで、旅費やその他経費の割合を抑えることにしたい。
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