本研究は、人が事態をどのように認知し言語化しているのかを明らかにするため、事態が描写された言語表現を分析するだけでなく、アイトラッキング装置を用いた視線分析を行うことにより、事態認知と言語表現の関連を実証的に検証するものである。 最終年度である平成27年度は成果をまとめる年度となるが、まず昨年度に引き続き、視線分析の基となる従来の言語分析(実験手法を用いて得られた事態描写時の言語表現を分析)を進めた。対象となる言語を広げ、特に移動表現については日本語、英語、イタリア語、ハンガリー語など、多言語の比較検証を行った。また母語だけでなく学習言語にも対象を広げ、各言語の個別性と、第二言語習得における事象の言語化への影響など幅広く分析することができた。その成果は国内外での研究会や学会での口頭発表、論文発表として公表している。 今年度はモバイル可能なアイトラッキング装置を確保することができ、昨年度進められなかった実験を実施することができた。装置だけでなく分析ソフトも場所を問わず使用することができ、検証の作業効率をあげることができた。言語は母語話者の日本語・英語、そして学習言語としての日本語と、多言語の実験には及ばなかったが、「移動表現文」「自他動詞文」「能動・受動文」等で表される様々な事象をビデオ映像やイラストを用いた実験素材を使って本実験を行った。最終的な研究目標であった事態認知(視線の動き)と言語化の関連を示す認知プロセスモデルの提示にまではまだ至っていないが、データの収集と検証方法の検討は進んでおり、今後の成果発表で示していきたい。
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