研究課題/領域番号 |
25580095
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
成田 広樹 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (60609767)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 併合 / 句構造の(非)内心性 / 句構造の(非)対称性 / 探索 / 構造依存性 / 普遍文法 / 意味の二重性 / 移送 |
研究概要 |
句構造の内心性の理論を詳細に展開した単著『Endocentric Structuring of Projection-free Syntax』を最終調整に向けて修正し、2回の査読を経、最終稿をJohn Benjamins社に提出し受理された。また、そこでの研究成果を部分的に拡張する研究としてSamuels氏との共著論文をLinguistic Analysisに投稿・受理・出版された。更に、内的併合(移動)の痕跡が並列する非内心構造{t, t}は完全解釈の原理のもとで排除されるという仮説を提案し、その成果を日本英語学会第31回大会及びWCCFL32にて発表した。 また、福井直樹(上智大学)他との上智大学言語学研究チームとの共同研究を進めた。まず、句構造内心性に関する最新の知見を解説したものとして、Fukui & Narita (近刊)を著し、査読を経て最終稿をRoutledgeに提出した。成田・福井(近刊)を著し、句構造の対称性(非内心性)が言語理論において果たす役割を検討した。Kato et al (2014)および加藤他(in press)において、言語理論における基本演算の種類を精査した。更に、Narita, Kato & Zushi「Review of Di Sciullo & Boeckx 2011」をEnglish Linguisticsから出版した。 更に、研究協力者である酒井邦嘉・飯島和樹らとの連携を進めた。日本語を母語とする実験参加者に意味を把握する上で構造依存的な(つまり言語的に自然な)関係を把握することを要求する人工語彙と非構造依存的な(不自然な)関係を把握することを要求する人工語彙の二種類を学習させ、それら二者の脳活動の違いを計測する実験を企画し、予備的な行動実験を行なった。また、研究協力者と共著論考を著した(成田・飯島・酒井)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、Narita, Kato & Zushi (English Linguistics)、及びSamuels & Narita (Linguistic Analysis)を、査読審査に基づく修正を経、年度内に出版することができた。更に、東京大学酒井邦嘉研究室の研究協力者たちとの共同研究が初年度次内に成田・飯島・酒井(BRAIN & NERVE)としてジャーナルに出版できたことは計画時の予定を大きく超える進展であった。また、当初予定していた日本英語学会第31回大会(福岡大学)での発表に加え、32nd West-Coast Conference on Formal Linguistics (WCCFL 32; University of Southern California)、CRESTワークショップ(東京大学)、生物言語学・東京ワークショップ(上智大学)、慶應言語学コロキアム(慶應義塾大学)、及び第87回かがみやま言語科学コロキアム(広島大学)で新たに当該研究に関わる発表を行なう機会を得たことも大きかった。その成果の一部は既に開拓社論考集(藤田耕司等編)に寄稿した2篇の出版が決定している。更に、東京大学酒井邦嘉研究室のメンバーや福井直樹(上智大学)、辻子美保子(神奈川大学)らと協同し、新たな実験を計画し、予備的行動実験を始めることができた。単著『Endocentric Structuring of Projection-free Syntax』も、2,3度の査読審査に基づく修正を終えて出版社に最終稿が受理され、出版に向けての最終調整の段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
成田・福井(in press)「統辞構造の内心性と対称性について」の研究において、我々は句構造の対称性(非内心性)が言語理論において果たす役割を検討した。次年度にはこの原稿をもとに英文での著書を企画し、出版社に査読を依頼する予定である。更に、Kato et al (2014)および加藤他(in press)において、言語理論における基本演算の種類を精査した。そこで得た結論によれば、これまでの言語理論において広く仮定されてきた一致(Agree)、コピー・鎖形成(copy/chain-formation)、束縛(binding)などの操作は、相(phase)の端(edge)から巡回的に適用される一般探索(generalized Search)の異なる現れとして統一的に説明できることになる。現在、加藤他の成果を更に推し進め、句構造の内心性を決定するラベル付け(labeling)の操作にまでこの一般探索の適用範囲を拡大することを検討している。また、日本英語学会第31回大会(福岡大学)及びWCCFL32 (University of Southern California)での発表成果をもとに新たに論文を執筆し、学術誌に投稿する。 更に、東京大学酒井邦嘉研究室のメンバーや福井直樹(上智大学)、辻子美保子(神奈川大学)らとの言語脳科学実験の企画を進める。予備的行動実験の成果を踏まえ、刺激文の修正や課題提示方法の工夫などを検討する。脳科学実験の成果を何らかの形で学会発表などの機会を設けて発表したい。 最後に、最終調整の段階にある単著『Endocentric Structuring of Projection-free Syntax』を二次年度内に出版することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
脳科学研究において、実験参加者に対する人件費や新規備品等を見込んでいたが、所属していた早稲田大学からの個人研究費や研究協力者である酒井邦嘉教授(東京大学)の研究室が有する備品や研究費等によってその一部を補填することができた。 次年度から日本大学に所属を変えて研究を行なう際に発生する備品・設備等の補填に充てる。また、当該年度に当初の予想以上に計画が進展したことで、新たな学会投稿などの機会を次年度に盛り込む予定である。
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