研究課題/領域番号 |
25580096
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
ヤーッコラ伊勢井 敏子 中部大学, 人文学部, 教授 (00454364)
|
研究分担者 |
広瀬 啓吉 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50111472)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 言語リズム / 呼気圧制御 / 腹筋と胸筋の動き / 呼気量 / 音響特徴量 |
研究概要 |
本研究の第一の目的は,音声発話における言語リズムと呼気圧制御の関係を探ることである。次に,その結果を発音教育に活かす方法を探ることである。 一つ目の実験では,日本人英語学習者が日本語と英語の物語を朗読した場合の音声と呼吸制御がどのように関係しているかを、 (1)ピッチと音圧、(2) 胸筋と腹筋、(3) 胸筋とピッチ、(4) 腹筋とピッチ、(5) 胸筋と音圧、(6) 腹筋と音圧、の其々の相関を信号処理と統計処理した。比較のために,英語話者のデータも取り入れた。結果,日本語話者と英語話者が日本語と英語で朗読をした場合、大きな差がでたのは音響特性(ピッチと音圧)の相関であった。言語にかかわらず胸筋と腹筋の相関は日本語話者のほうがわずかに大きかった。朗読言語による標準偏差の違いは日本語話者により大きく出た。 二つ目の実験では,上記6種の相関に加え、喉頭制御(声帯振動)との相関も見るためラリンゴグラフを用いた。そして、(1)ピッチと音圧、(2) 胸筋と腹筋、(3) 胸筋とピッチ、(4) 腹筋とピッチ、(5) 胸筋と音圧、(6) 腹筋と音圧、(7) 胸筋と声帯振動、(8) 腹筋と声帯振動の8種類の相関を信号処理による統計で比較した。加えて、腹筋や胸筋の動きのピークと、ピッチと音圧のピークの相関を比較した。また、呼吸のメカニズムや調音運動を考え、胸筋、腹筋、ピッチ、音圧や声帯振動の時差の確認と、腹筋・胸筋とピッチと音圧の時差を見た。結果,(1)胸筋・腹筋と喉頭(声帯振動)の相関はなく、言語話者にも朗読言語にも関係しないことが分かった。また、ピークの比較から(2) 日本語話者は言語にかかわらず、ピッチと音圧の変化は見られないが、英語話者は言語によりそれらを変化させることが判明した。さらに時差の比較で(3)英語話者の方が胸筋と腹筋の時差が大きく、日本語朗読より英語のほうが時差は大きいことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸ピックアップ(ストランゲージ)を用いての実験はほぼ順調に推移している。特に,平成25年度は日本語話者だけを被験者として予定していたが,その他の言語話者もデータを獲得できた点は予定より進展している。他方,平成25年度の日本語話者20名という数値は満たしていない。それでも,日本語を含めた複数言語話者による腹・胸の筋肉の動きだけの観察で明らかになったことは,全く母語と異なる外国語でも,習熟度が上がると腹・胸の筋肉の動きが母語話者に近くなる傾向が見られた点である。また,腹・胸の筋肉の動きが比較的連動する言語とあまり連動しない言語がある,という点も分かってきた。 予定より早く,腹・胸の筋肉の動きの相関だけでなく,音響特徴量との相関も一部統計解析することができた。音響実験ではピッチ・音圧・長さを見てきたが,特に,呼吸とポーズとの関係が新たな研究課題となった点は,成果が出たと言える。ポーズは息継ぎだけでなく,言語リズムを生み出すための時間長としては,短い休止時間を示している。 他方,呼吸量については,録音とは異なり,かなり準備が必要で,専門家のアドバイスが必要であること,それでも,呼吸量の計測には不十分な点があることがわかってきた。そのため,より正確に計測するための方策を様々探っているところである。よって,この部分については予定よりは遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
予定した各言語話者の被験者を揃えての実験を続ける。また,呼吸量についての計測が開始できるように複数の専門家のアドバイスを仰ぐ。 予定しなかった言語も参考に見た結果,そのことで本研究の目的を補強するものであることも分かってきた。これも時間の許す範囲で被験者からのデータを取得する。 呼吸信号と音響信号の比較について,特に,ポーズの役割が言語リズムとより深いの関係があるらしいと思われたので,この点についても,更に実験を続ける。 また,朗読音声の種類を増やす,また,朗読音声以外の実験試料も新たに加える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予定していた被験者数が集まらなかったため。 予定していた被験者を集めて実験データを取る。
|