研究課題/領域番号 |
25580098
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
窪薗 晴夫 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・構造研究系, 教授 (80153328)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イントネーション / アクセント / 疑問文 / 呼びかけ文 / 鹿児島方言 |
研究実績の概要 |
鹿児島方言の疑問イントネーションと呼びかけイントネーションについてさらに分析を進めた。特殊な事情(「現在までの進捗状況」の欄参照)により、十分な現地調査を行うことができず、また海外での発表も困難であったが、分析の方は比較的順調に進んだ。特に、(1)疑問イントネーションと呼びかけイントネーションにより、アクセント型がどのように変わるか、(2)とりわけアクセント型の対立(A型、B型)が保持されるかどうか、(3)疑問イントネーションのアクセント型と呼びかけイントネーションのアクセント型が区別できるか否か、以上の3点について考察を進めた結果、(1)についてはB型アクセントがA型アクセントと同様に下降調で現れるようになることと、呼びかけイントネーションにA型もB型も二通りの音調パターン(Ⅰ型とⅡ型)が現れることを明らかにした。(2)については、疑問・呼びかけのいずれにおいても、アクセント型の対立が無くなる(中和が起こる)が、その条件は疑問イントネーションの場合がはるかに厳しく、呼びかけイントネーションではかなり自由に中和が起こることがわかった。また(3)については、方言インフォーマントを対象にした簡単な聴覚テストにより、呼びかけイントネーションと疑問イントネーションの音調パターンが聴覚的に区別がつかないことが多いことを明らかにした。 さらに、これらの分析結果を東京方言に関する予備調査の結果と比較したところ、(1)のうち呼びかけイントネーションに見られる下降調は東京方言にも見られるようであるが、疑問イントネーションの下降調は同方言に見られないこと、また、(2)と(3)はいずれも東京方言には見らない特徴であるという知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本言語学会の会長に選出されたことなどにより、数回計画していた方言調査を1回しか行えず、また海外の学会における発表も実施できなかった。その一方で、すでに得られていたデータの分析と、論文の執筆は予定通り行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに調査を重ねて、より多くの方言話者からデータを得ると同時に、それらのデータを音響分析することにより、アクセントの中和現象などが音響レベルにおいても起こっていることを実証する。また海外の学会で成果を発表し、さらに論文の執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年4月に学会の会長に就任した等の理由によって調査研究や成果の発表が十分にできなかったため、研究期間の延長を申請し認められた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度においては平成27年度に予定していた調査と成果の発表を行う。
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