研究課題/領域番号 |
25580099
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 川村学園女子大学 |
研究代表者 |
長崎 靖子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (60419794)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 『式亭雑記』抄録写本 / 三馬自筆『式亭雑記』 / 慶應義塾図書館所蔵『式亭雑記』 / 達摩屋五一 / 三馬蔵書印調査 / 三馬識語のある書 |
研究概要 |
本年度の研究計画として掲げていた『式亭雑記』抄録写本の整理、並びに国会図書館所蔵の式亭三馬の蔵書印のある書の調査に関しては、次のように行った。 まず、『国書総目録』に示されている6種の写本(九州大学附属図書館、関西大学図書館、東京大学総合図書館、慶応義塾図書館、早稲田大学図書館、西尾市岩瀬文庫図書館所蔵)の調査、さらに『国書総目録』の中で『柳亭漫録』の名で記されている書に合冊されている『式亭雑記』、磐田市立図書館所蔵(元赤松家蔵)の『式亭雑記』の併せて8冊の比較調査を行った。調査の結果、抄録写本には、江戸の書肆達摩屋五一識語のある写本と、それ以外の写本の二種があることが判明した。この成果に関しては『近代語研究』17集(2013.10刊行)「『式亭雑記』諸本に関して―八種の抄録写本の調査から―」で報告した。 また『式亭雑記』抄録写本調査の途中、所在不明とされていた式亭三馬自筆の『式亭雑記』が大東急記念文庫に所蔵されていることを知り、三馬自筆本の調査も行った。自筆本の調査から、慶応義塾図書館所蔵の『式亭雑記』を書写した人物と自筆本に朱の書き込みを行った人物が同一であることが判明した。本成果は、日本女子大学大学院の会研究発表会(2013.9開催)「達摩屋五一識語『式亭雑記』抄録写本に関して」で口頭発表を行い、さらに『川村学園女子大学研究紀要』第25巻1号(2014.3刊行)「慶應義塾図書館所蔵『式亭雑記』―翻刻と解説―」で報告した。 加えて、新たに『式亭雑記』抄録写本2種を見つけ(東北大学図書館、共立女子大学図書館)、これらの写本の調査も行った。 尚、同時進行で、国立国会図書館所蔵の三馬の蔵書印のある書の書誌調査を行い、調査に関してはほぼ完了している。現在は蔵書印を種類別に整理する作業を進行中であるが、特に三馬の蔵書印と共に、三馬の識語のある書に関し調査を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『式亭雑記』抄録写本の調査に関しては、現在計十冊の所在を確認し、これらの写本が二種に分かれることを明らかにした。この成果は研究論文として『近代語研究』17集に発表した。また、調査の途中で三馬自筆の『式亭雑記』の所在が分かり、本書の調査も行うことができた。この自筆本調査において、自筆本と慶応義塾図書館所蔵『式亭雑記』の関係が明らかとなった。この成果は日本女子大学大学院の会研究発表会で口頭発表し、さらに『川村学園女子大学紀要』において報告した。 国会図書館蔵の三馬蔵書印調査はおおむね完了し、現在は蔵書印と共に三馬の識語のある書に焦点を絞り調査中である。 以上を以て初年度の目的はほぼ達成できたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、三馬自筆『式亭雑記』の調査をさらに進める。特に仮名遣いや漢字の使用を、三馬著作の版本や『式亭雑記』抄録写本と比較し、そこから三馬の用字の特徴を明らかにする。 また、三馬の蔵書印のある書に関しては、現在国会図書館の蔵書を中心に整理を進行中であるが、特にこの中で三馬識語のある書に焦点を当て、その内容調査から三馬の蔵書が三馬の言語描写に与えた影響に関し考察する。 これらの研究成果は紙面等で公表する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
直接経費支出の際、端数が生じたため。 端数175円に関しては、今年度調査旅費の中で使用する予定である。
|