研究課題/領域番号 |
25580106
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都聖母女学院短期大学 |
研究代表者 |
能勢 卓 京都聖母女学院短期大学, 児童教育学科, 講師 (70626837)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 台詞の文体分析 / 台詞の言語分析 / 英米演劇 / コーパス言語学 / 電子化テクストの作成 / 国際学会・国際情報交換 / 国内学会・研究会での情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、英米の演劇作品[例, E. O'NeillやS. Maugham]の文体分析の基礎的データとなるテクストの電子化と、その電子化されたテクストを用いて科白の文体や言語的特長を多角的に分析し、様々な場面における登場人物の多様な伝達内容が、いかにして効果的に言語化されているのかに関して調査・研究を進めていくことである。 平成25年度において、対象劇作家であるO’Neillの演劇作品のテクストの電子化を実施するための試行として、O’NeillのMourning Becomes Electraの電子化テクスト(コーパス)を作成し、その試作電子化テクストを用いて台詞の文体的・言語的特徴の分析が実行可能であるかを検証した。この試作コーパス作成において、台詞の文体分析を行う上で必要な電子化テクストの作成の為には、第一に各作品のプレイン・テクストを作成し、その上で登場人物ごとに全ての台詞を編集し、さらにト書と各登場人物が発話する台詞内容に分けたテクストの作成が必要であることが判明した。 上記の試行から明らかになったことをもとに、平成25年度後期において、O’Neillの初期と中期の演劇作品の電子化テクストの作成を開始する。テクストの電子化は、OCRによりMSワード化された各作品の電子化テクストを実際に読んで間違いをマーカーでチェックし、その上で全ての間違いをMSワード上で修正することで各作品のプレイン・テクストが出来上がる。今回の研究における作成予定の電子化テクストは、O’Neillの50作品[推計約140万words]であり、平成25年度においてその内の22作品[約80万words]のテクストのチェックを完了し、プレイン・テクストを作成する。またそれと並行して、演劇テクストの分析方法に関する各種研究会・学会に参加し、台詞の文体的・言語的特徴の分析方法を調査・研究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年の4月から6月にかけて執行出来る予算が無く、その結果E. O'Neillの演劇作品の電子化テクストの試作コーパス(Mourning Becomes Electra)の作成は孤軍奮闘の状態であったため、試作に予想以上の時間が掛かってしまった。しかしMourning Becomes Electraの台詞の文体的・言語的特徴を分析するための電子化テクストとして、どの様な手順と手法によりテクストを作成するべきか、また個々の登場人物の台詞の文体分析に必要となるテクストの処理の方法の問題とその対処法も見出せという点を考えあわせるならば、この試作コーパスの作成に時間を費やしたことは、その後の電子化テクストの作成作業の基本的枠組みが出来たという点で、一定以上の意義を有することであった。そしてこのMourning Becomes Electraの電子化コーパスを利用した登場人物のセリフの文体的特長に関してPALA 2013 (2013/7/31-8/4, at Heidelberg University)において研究発表を行い、このコーパスを用いた台詞の文体分析に有効性が見出された。 平成25年後期よりO'Neillの演劇作品のテクストの電子化を本格化させるが、この段階においても、電子化された英文のチェック作業やチェック後の修正作業を行う人物の選定とそれに関わる各種の事務作業の為に予想外の時間が取られた。またそれと同時に作品によってはト書と台詞の区別に予想以上の時間を必要とする作品もあり、想定していたペースでテクストの電子化を進められないこともあった。しかし平成25年度において、O’Neillの50作品[推計約140万words]の内の22作品[約80万words]のテクストのチェックを完了し、プレイン・テクストを作成することが出来たことにはそれなりに評価出来ることでもあった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度より行ってきたO'Neillの演劇作品の電子化テクストの作成を進め、全作品のプレイン・テクストの作成を完了させる。その上で、O'Neillの中期の演劇作品を中心に、幾つかの作品[例, Strange Interlude and Mourning Becomes Electra]に関しては登場人物ごとのテクストを作成し各登場人物の台詞の文体を分析出来るコーパスを作成していく予定である。そしてO'Neill作品の電子化テクストを用いて中期の幾つかの演劇作品の台詞の文体的・言語的特徴を分析し、その研究成果を学会などで研究発表を行う。 O'Neillの演劇作品の電子化テクストの作成とその電子化テクストを用いた台詞の文体分析を行う一方で、O'Neillの中期の演劇作品のアイデア・ノートや演劇作品の草稿をイェール大学バイネキ稀覯本図書館などに所蔵されている資料を調査・研究する。台詞の文体分析に必要とされる演劇作品のノートや草稿のマイクロフィルムを可能な限り作成し、更にそのマイクロフィルムをJPEGなどの形式に変換して電子化し、それぞれの作品の手書き原稿・タイプ原稿双方の草稿をデータ化する。その上でアイデア・ノートや草稿のデータを元に、草稿間の言語的特長の変化(主に単語の加筆修正、文構造の変化)を分析していく。 また悲劇作品で評価の高いアメリカの劇作家であるO'Neillとの比較対象として同時期に喜劇で評価の高いイギリスのS. Maughamの演劇作品の電子化テクストの試作を行った上で、Maugham自身が編纂に関わったCollected Playsから出来るだけ多くの作品の電子化テクストを作成していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初平成26年3月にアメリカにO'Neillのアイデアノートや草稿を調査・研究に行くことを検討していたので予算の使用に注意をしていたが、平成25年度内の予算ではアメリカに資料調査に行くには予算的に少々厳しく、また現在進行中のテクストの電子化作業に集中する為には、日本を2014年3月に一定期間以上離れることは作業進行の上でも厳しかった。それ故平成26年8月にアメリカに調査に行くことにし、結果として45,817円の予算が残り、次年度に繰り越されることとなった。 繰り越された45,817円の予算は、アメリカにO'Neillのアイデアノートや草稿を調査・研究の費用として、また必要であれば、テクストの電子化の作業にかかる経費として使用していく予定である。
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