研究課題/領域番号 |
25580125
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
兼元 美友 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (90362095)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 法言語学 / 名誉毀損 / EGP / 言語学教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、司法領域において理論言語学の知見を活用すること、そして法言語学資料を外国語教育へ応用させること、の2つである。以下、目的ごとに現在までの実績の概要を述べる。 1. 「理論言語学の司法領域での活用」(法言語学自体の発展と普及への寄与) これまで取り組んできた動詞の語彙意味論を用い、刑事裁判の名誉毀損事件において問題となった名誉毀損的表現に出現する動詞を分析した。そして、「事実の摘示」という要件の基礎には「事実を摘示された人物・団体が意図的に悪い行為を行い、その行為によって周囲が迷惑や被害を被った」というスキーマが存在していること、また、動詞の種類としては、内在的に「行為+行為と因果関係を有する結果」までを含む動詞類が代表例となることを指摘した。25年度末の成果が学会誌に公表され、26年度には分析を精緻化し、学会の研究例会で発表し、言語学者、法曹両者からコメントを得ることができた。また、26年度末には、米国で「商標の普通名詞化」や「法のクレオール化現象」について資料収集・調査を行い、今後の研究に対する着想を得ることができた。 2.「法言語学資料の外国語教育への応用」 26年度、英語学専攻の学生を対象に、法言語学資料をEGPおよび言語学教育に活用する試みを行った。その中で「目撃証言の分析における動詞の役割」に着目した一事例を紹介し、一般的な英語力の向上と言語学的分析力の涵養のために、法言語学資料が有用であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時に計画した順序とは異なるものの、法言語学資料のEGPと言語学教育への利活用についてはカリキュラム策定、試験的実施、実施後の考察まで進めることができた。従って、全体としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
第一の研究目的「理論言語学の司法領域での活用」(法言語学自体の発展と普及への寄与)に関しては、語彙意味論の観点から商標の分析を進めて行く予定である。しかし、理論言語学を司法領域で活用するためには法曹の側からのニーズに応じることが最優先であるため、昨年度のように、申請時に想定した分析対象に囚われず、新しいテーマに引き続き柔軟に対応していくつもりである。 第二の研究目的「法言語学資料の外国語教育への応用」については、英語学専攻の学生を対象とした授業用の新しいカリキュラムを作成、実践し、その成果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
二度の海外出張の予定が、研究の進捗状況により一度になったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
国内外出張費用 海外での講習会の費用 図書・物品の購入 など
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