研究課題/領域番号 |
25580144
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
池上 真人 松山大学, 経営学部, 准教授 (60420759)
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研究分担者 |
青木 信之 広島市立大学, 国際学部, 教授 (80202472)
渡辺 智恵 広島市立大学, 国際学部, 教授 (80275396)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多肢選択型問題 / 英文法 / 複数正答 |
研究実績の概要 |
2014年度は多肢選択型の択一式と複数正答式の2つの設問形式の弁別力を2013年度とは異なる学生を用いて再度調査検討し、さらにそれぞれの設問形式の解答に至るまでの推論プロセスを明らかにするためのインタビュー調査を行った。まず、弁別力の再検討については、「理解している学習者」と「理解していない学習者」、「設問に正解した学習者」と「正解しなかった学習者」を組み合わせた4パターンに分類して検証した結果、択一式問題のほうが、複数正答式問題よりも、「理解していない・正解した」のパターンが多いことが示された。本研究は「理解していないのに、正解してしまうこと」が多肢選択型の一番の課題であるという点を出発点としているため、一見すると択一式の方がより良い設問形式であるかのような結果が示されたのであるが、実際には択一式において「理解している」と判断された調査参加者のうち、複数正答式でも「理解している」と判断されたのは37%に過ぎず、41%は択一式で「理解している」と判断されたにも拘わらず、複数正答式では「理解していない」と判断された。すなわち、択一式問題においては「理解ができている」という判断そのものが危ういことが示されたと言える。これは2013年度の調査結果を補強する結果であった。また、それぞれの設問形式における解答までの推論プロセスについては、多くの調査参加者から類似した結果が得られた。それは、択一式は消去法で誤答を探すのに対して、複数正答式では正答を探すという点であった。また、複数正答式を難しくしている要因の一つが、正答数が分からないという点であると述べる参加者も多く、択一式においては選択肢間の比較が重要なヒントであることが改めて示された。実際に、択一式であれば、比較的自信を持って解答する参加者も、複数正答式では自信がないと述べる場合が多く、自ら知識の曖昧さを指摘する参加者も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、予定していた調査はほぼ順調に進んでいるが、推論プロセスを検討する調査において、予想していた以上に「なんとなく」選択肢を選ぶ学習者が多く、2つの設問形式の解き方のプロセスが熟達度によって異なっているのではないかと考えられた。そのため、2014年度に引き続き熟達度の異なる調査参加者を対象として確認調査を行うことを予定している。また現在、調査対象としている文法項目が「時制」のみであることから、文法項目を増やして追加の調査をすることも予定している。 調査そのものは比較的順調ではあるが、研究成果に関する成果発表が遅れているため、2015年度に口頭発表、論文等によって、これまでの研究成果の公開を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、2014年度までの研究結果を受けて、いくつかの追加・確認調査を行いたいと考えている。まず対象とする文法項目を拡大して調査を行うことを予定している。また、レベルによって異なるであろうと予測される推論プロセスの検討についても、引き続き調査を行う予定である。そのほかに、調査を進めていくにつれて、複数正答式問題の誤答から学習者の文法理解の度合いに関する知見を多く得られる可能性が感じられているため、当初の調査計画であった学習への影響についての検討に加えて、誤答分析を実施するための量的・質的調査も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、旅費が支出されていないのは、主に、研究代表者が分担者の大学に非常勤講師として出講していたため、研究会をその出講日時に合わせて行ったためである。 人件費・謝金については、調査参加者への謝金を計上していたが、調査参加者への謝礼を図書カード等の物品によって行ったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者が、すでに分担者の大学への出講を終えているため、研究会用の旅費を支出する必要がある。また学会発表も予定しているため、それらの旅費としても使用する予定である。さらに、2015年度は追加調査・確認調査を行う計画であり、それらの謝金等も必要としているため、総合的には使用計画に大きな変更はないと考えている。
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