研究課題/領域番号 |
25580145
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター) |
研究代表者 |
二五 義博 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 准教授 (60648658)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CLIL(内容言語統合型学習) / 教科横断的指導 / 多重知能理論 / コミュニケーション能力の育成 / 小学校英語教育 / スイスの外国語教育 |
研究概要 |
本研究の目的は、海外や日本のイマージョン校の事例も参考にしながら、他教科内容を生かす小学校英語教育を行うことが、児童の英語学習意欲を高める上でも、将来に役立つ実用的なコミュニケーション能力育成を図る上でも最も効果的なことを理論的・実践的に示すことである。 この研究目的に沿い、研究の1年目である当該年度においては、海外で主張されている理論の検証を行った。具体的には、CBI(内容重視の指導)やヨーロッパで浸透しているCLIL(内容言語統合型学習)を軸とした、小学校や他教科横断型英語指導に関わる文献研究をし、理論的な背景の整理を行った。なお、今回の文献研究は、科研費以外で購入した図書やインターネット上で取得した学術資料に基づいた。この理論的考察の一定の研究成果としては、2013年6月に山口大学で開催された中国地区英語教育学会にて「ヨーロッパのCLIL(内容言語統合型学習)に関する一考察」という口頭発表を行った。 また、海外で実践されている外国語教育の分析に関しては、当初、カナダと西ヨーロッパの二つの事例を取り上げる予定であったが、前者のイマージョン型よりも後者のCLIL型の方が急に英語教育学会で注目を浴び始めたため、後者(特にスイスの事例)に的を絞った。現地の教育報告書等を分析した結果、スイスの小学校では他教科を利用するCLIL的英語教育が広まり、その効果も科学的な実験により実証されていることが分かった。 さらに、広島市の公立小学校で授業実践した際にとった、アンケートの結果の集計および分析を実施した。これらの研究成果として、2013年7月に琉球大学で開催された小学校英語教育学会にて口頭発表を行い、2014年3月には同学会の全国学会誌に、「CLILを応用した二刀流英語指導法の可能性―小学校高学年児童に社会科内容を取り入れた指導を通して―」というタイトルの論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、算数、理科、社会、音楽や体育などの他教科内容を小学校英語教育に取り入れることが「理論的・実践的に」いかに有効であるかを明らかにすることであるとしている。 前者の理論については、CLIL(内容言語統合型学習)やCBI(内容重視の指導)および多重知能理論などを中心として、これらの理論を検討した結果、小学校における教科横断的な英語指導法には様々な利点があることが示された。この理論研究の点では、研究は当初のほぼ計画通りに進行しているといえる。 一方で、後者の実践については、西ヨーロッパの事例(特にスイス)を取り上げ、現地から取り寄せた教育報告書やインターネット上に公開されている授業例の詳細な分析を行った。しかしながら、現地の小学校へ行って、実際に授業観察するまでには至らなかった。この現地調査の点では、研究は当初の計画より遅れているといえる。 全体的に自己点検による評価をすると、1年目の研究としては、「やや遅れている」と結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の理論的考察の結果や英語教育学会の最近の動向を踏まえ、当初の研究計画を一部変更し、カナダのイマージョンよりもヨーロッパのCLIL(内容言語統合型学習)に研究の重点を置く方針である。そこで2年目の現地調査についてはカナダは中止し、第一候補として、CLIL(内容言語統合型学習)の浸透しているヨーロッパを主要な研究対象とする予定である。それが難しい場合は、第二候補として、CLIL的な他教科内容を小学校英語教育に取り入れているアジアの国(具体的な国は当初の計画通り韓国やフィリピンにするかどうか現在検討中)を対象にしたい。 また、2年目の研究成果の発表の場としては、国内の学会のみを当初の研究計画では予定していた。しかしながら、「外国語教育」というグローバルなテーマにおいては、国内のみならず海外での研究テーマに関する国際的議論を通じて、本研究をより深め、発展させていく必要があるのではないかという思いに至った。そこで2年目には、これまでの研究の中間発表として、2014年8月にオーストラリアで開催される英語教育の国際学会(AILA2014)で口頭発表することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として予定していた「CBI(内容重視の指導)関係図書」と「西ヨーロッパのCLIL(内容言語統合型学習)関係図書」に関しては、1年目の研究段階では、所属校の研究費等でまかなうことができ、科研費を使用する必要がなかった。「カナダのイマージョン教育関係図書」については、イマージョンからCLILへの研究重点の転換により、購入を中止した。また、1年目には、インターネット上で公開されている無料の学術資料を多く取得できたことで費用がかからなかった。 国内旅費については、ほぼ計画通りに科研費を使用した。その一方で、外国旅費(カナダ)については、当初の研究計画を一部変更し、カナダのイマージョンよりもヨーロッパのCLILに研究の重点を置いたため、カナダの現地調査は中止した。また、外国旅費(ヨーロッパ)については、研究の遅れもあり、1年目でのヨーロッパにおける現地調査は実施することができなかった。 2年目には研究の発展につれ、図書費は所属校の研究費等だけではまかなえなくなることが予想される。そこで、次年度には、CLIL関係図書およびヨーロッパやアジアの小学校英語教育関係図書を中心に、科研費を使用して物品を購入することを計画している。 外国旅費についても、2年目には次年度使用額を合わせて使用する計画である。具体的には、(1年目に実施できなかった)CLILの浸透しているヨーロッパの国、あるいはCLIL的な小学校英語教育を導入するアジアの国で現地調査を行う予定である。加えて、1年目の研究成果は国内での学会発表のみにとどまったが、研究テーマをさらに深化させるには、十分な国際的議論を行う必要があり、2年目には海外での学会発表の旅費として科研費を使用することを計画している。具体的には、2014年8月にオーストラリアで開催される英語教育の国際学会(AILA2014)で口頭発表する予定である。
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