研究課題/領域番号 |
25580145
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研究機関 | 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター) |
研究代表者 |
二五 義博 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 教授 (60648658)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CLIL(内容言語統合型学習) / 教科横断的指導 / 多重知能理論 / コミュニケーション能力の育成 / 小学校英語教育 / スイスの外国語教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、海外や日本の事例も参考にしながら、他教科内容を生かす小学校英語教育を行うことが、児童の英語学習意欲を高める上でも、将来に役立つ実用的なコミュニケーション能力育成を図る上でも最も効果的なことを理論的・実践的に示すことである。加えて、日本の小学校英語教育の現状に即した形で、他教科内容を活用した新しい英語指導法や教材の開発を試みることである。 これらの研究目的に沿い、研究の2年目である当該年度においては、まず、海外における他教科内容を活用した実践例の研究に努めた。第1に、1年目に引き続きスイスの事例を取り上げて、学術資料や現地の教育報告書等の収集や分析を行った。その研究の成果としては、2014年6月に広島市立大学で開催されたJACET中国・四国支部春季研究大会にて「スイスにおける外国語教育政策―多言語教育、CLIL、外国語教員養成の視点より― 」という口頭発表を行った。第2に、2014年8月、CLIL(内容言語統合型学習)を大会のメインテーマとする国際学会、AILA World Congress 2014(Brisbane,Australia)に参加した。ここでは、ドイツ、イタリアをはじめとするヨーロッパの国々、香港やオーストラリアなどのアジア・太平洋地域における最新のCLIL実践例に数多く触れることができ、現在それらの検討を行っている。 次に、日本の事例研究に関しては、呉市立吉浦小学校にて授業観察(2014年9月と11月)を行って小学校英語教育の現状を把握するとともに、2014年9月には小学校CLIL学会に参加して国内の教科横断的な実践例の情報収集を行い、今後の教材開発に向けての参考とした。 最後に、呉市公開講座で授業実践をした際のアンケート結果等に基づき、2015年3月、中国地区英語教育学会の研究紀要に理科の教科内容の活用をテーマにした論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、理論と実践の両面から、他教科内容を小学校英語教育に取り入れることがいかに効果的であるかを明らかにし、日本の小学校ではまだあまり見られない「内容」と「言語」を統合した新しい指導法を提案することにある。 理論については、1年目に引き続き、文献等を通じてCBI(内容重視の指導)、多重知能理論およびCLIL(内容言語統合型学習)の視点から、小学校における教科横断的な英語指導法の研究を深めた。特に2年目には、2014年8月にAILA World Congress 2014、2015年2月にはCLILの講義とワークショップに参加するなど、世界各国におけるCLILの最新の研究に触れることができ、当初の計画以上に大きな収穫があったといえる。 実践については、1年目に続いて西ヨーロッパの中ではスイスの事例研究を詳細に行った。また2年目では、オーストラリアでのCLILを中心とした国際学会に参加することにより、ヨーロッパやアジア・太平洋諸国の小学校において、実際にどのような他教科を生かす外国語指導が行われているかの実践例を多く学ぶことができた。しかしながら、海外の現地の小学校に行って、自分の目で授業観察をするまでには至らなかった。 教材開発については、パイロットスタディ的に理科の教科内容の利用を試みたものの、幅広い教科領域を利用する形での新しい指導法の提案には現在までのところ達していない。 以上を総合的に自己評価すると、理論研究ではほぼ計画通りに進行しているが、実践研究や教材開発では遅れているため、2年目の研究としては「やや遅れている」と結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
理論面の研究においては、特にCLIL(内容言語統合型学習)に関する研究がヨーロッパやアジアで毎年のように出されているため、今後も海外における最新の研究を取り入れながら本研究を進めていきたい。同時に、多重知能理論やCBI(内容重視の指導)を個別に整理してきたが、今後は教科横断的学習を軸にこれらの理論とCLILとの比較考察も行う予定である。こういった理論研究から、外国の理論をそのままの形で適用するのではなく、日本の小学校の教育現場に合うような形での日本型CLILの理論構築を試みる。 実践面の研究では、これまで取り上げてきたスイスの事例に加え、時間と予算が許す限り他の国の事例も取り上げたいと考えている。CLILの浸透しているヨーロッパの主要国かCLIL的な他教科内容を小学校英語教育に取り入れているアジアの国を事例研究の新たな対象とし、可能ならば現地調査を行うことも検討中である。 教材開発では、単に他教科内容を取り入れるというレベルではなく、どの教科のどの部分を英語学習に利用すれば効果的なのかといった、より具体的レベルで今後の研究を進めていきたい。そして、もし許可が得られれば(現在呉市の小学校で申請中)、開発した教材で授業実践を試み、その効果を検証したいと考えている。 学会発表に関しては、1~2年目にも国内外で理論と実践の両方の側面からいくつか行ってきた。とりわけ、2年目には中間発表として、オーストラリアで開催された国際学会(AILA2014)にて予定通り口頭発表をした。3年目では、予算の関係もあり主に国内の全国大会にて、これまでの研究成果を積極的に公表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として予定していた CBI(内容重視の指導)、CLIL(内容言語統合型学習)やアジアの小学校英語教育の関係図書については、2年目の研究段階でも所属校の研究費等でまかなうことができ、科研費を使用する必要がなかった。また、当該年度である2年目においても、インターネット上で公開されている無料の学術資料を多く取得できたことで費用がかからなかった。 国内旅費については、多くの学会に参加して情報収集や口頭発表を行ったため、計画していた以上に科研費を使用した。その一方、外国旅費については、年度当初の使用計画では2回の国外出張を予定していたが、所属校において予定外の重要校務が入ったため1回のみになった。参加した国際学会の大会メインテーマが私の研究分野と一致していたこともあり、この1回で予定していた情報収集と口頭発表の両方をこなすことができたが、費用は計画していた程にはかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度である3年目には、研究のさらなる進展につれ、図書費は所属校の研究費等だけではまかなえなくなることが予想される。そこで、次年度には、CLIL関係図書およびヨーロッパ、アジアや日本の小学校英語教育関係図書を中心に、科研費を使用して物品を購入することを計画している。 外国旅費については、3年目には次年度使用額を合わせて使用する計画である。可能ならば、前年度に校務の関係で断念せざるを得なかった現地調査を少なくとも1回は実施したい。場所は現段階では未定だが、CLILの浸透しているヨーロッパの国、あるいはCLIL的な小学校英語教育を導入するアジアの国での現地調査が適切であると考えている。 なお、3年目には、物品費よりも旅費(国内・外国)の方に多くの残額を使用する計画である。これは研究の進展により、図書の購入よりも現地での情報収集や学会での成果発表の方が本研究にとって重要となってきたためである。
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