2020年の小学校英語の教科化に向けて、これまでの初歩的で体験的な英語活動とは異なる、本格的で質の高い学びが求められている。そこで本研究の目的は、海外や日本の事例も参考にしながら、他教科内容を生かす英語指導を行うことが、児童の英語学習意欲を高める上でも、将来に役立つ実用的なコミュニケーション能力育成を図る上でも最も効果的であることを理論的・実践的に示すことである。加えて、ヨーロッパで浸透しているCLIL(内容言語統合型学習)の効果を検証しながら、日本の小学校に合うCLIL教材を開発し、その可能性を提案することである。 これらの研究目的に沿い、初年度から海外ではスイス、日本ではイマージョン校やいくつかの公立小学校での事例研究を実施してきたが、最終年度においては、イタリアにて10日間のCLIL授業の観察を行った。その授業分析の結果、他教科のオーセンティックな内容による英語学習への動機づけ、多重知能を活用した個性を生かす英語教育、実際の場面を想定したコミュニケーション能力の育成、思考力(特に高次)を高める活動の導入、CLILと組み合わせたICTの利用などの点では、日本の今後の小学校英語教育へ大いに示唆できることが分かった。 CLIL教材を開発しその効果を検証した研究成果については、前年度までに引き続き最終年度においても、論文執筆や学会口頭発表の形で積極的に公表した。前者では、、小学校5年生を対象にして、世界一周をテーマとした社会科内容を活用しながら英語を統合的に指導する、学習者中心の質の高い学びを提案した。後者では、日本児童英語教育学会や小学校英語教育学会にて、「個性」や「思考」の観点から他教科内容を生かすCLILの効果を明らかにした。 今後の研究の展開としては、算数、理科、社会に加え、体育や図画工作といった実技教科でのCLILの検証と日本の小学校英語教育への提案を考えている。
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