本研究課題は、ブラジル日本移民関係資料について、民間レベルにおける移民事業に関わった機関・団体、もしくは移民個人によって作成・授受・収集・蓄積された記録史料群(アーカイブズ)を対象に、アーカイブズ学の手法を用いた整理・編成・記述・保存、利活用および公開方法の検討を通じて、最終的に「移民アーカイブズ」の構築を目指すものである。 2016年度の実績として、国内調査については、主たる調査対象である日本力行会(現在は学校法人、東京都練馬区小竹町)の2代目会長であり、戦前・戦後を通じてブラジル移民送出事業および移殖民教育を推進した永田稠(ながた・しげし)の記録である「永田文書」の、アイテムレベルでの目録記述が完了した。 海外調査については、2016年9月にブラジル・サンパウロ市で4回目の現地調査を行った。調査対象であるサンパウロ人文科学研究所へ寄贈された「コロニア知識人」の資料群について、寄贈者ごとに箱単位での概要調査をほぼ完了させることができた。 また、2017年2月4日には、一昨年度、昨年度に引き続き、ブラジル日本移民を対象とした記録映像を制作している映画監督・岡村淳氏を講師として招き、第3回目の記録映像上映会・講演会を江東区深川東京モダン館で開催した。当日は「60年目の東京物語 ブラジル移民女性の里帰り」および「ブラジルの土に生きて」の上映と監督によるレクチャーを行い、一般参加者を含めた活発な議論が行われた。 本研究では、日本・ブラジル両国における、特徴的な移民資料を「移民アーカイブズ」として体系化し、研究資料として利用提供するための基礎的な作業を完了した。今後はこれらの資料群の多角的な利用を可能とするための公開・利活用の方法について、また他の資料群への適用方法について、引き続き検討していきたい。
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