本研究は、戦前期満洲地域における観光ポスターやパンフレット、リーフレット、旅行雑誌及び書籍の表紙や挿絵、絵葉書などの観光宣伝印刷物を手がかりに、観光デザインの歴史的変遷を交えながら、観光宣伝の実態を解明したものである。 1920年代頃から南満洲鉄道は内地客の観光誘致に乗り出し、嘱託画家・眞山孝治を中心に、宣伝印刷物の図案や観光絵画の制作に取り組んだ。そして満洲国建国(1932年)前後から、満洲最大の民俗行事である娘々祭の祭神「娘々」と、武力を背景としない仁愛徳治を提唱する満洲国の国是「王道」を組合せたデザインのビラやポスターを大量に作成し、建国精神の浸透と宣撫工作に活用していった。
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