研究課題
2015年10月にテッサロニキの考古学博物館で当該パピルスの調査を行った。予想していたよりも残存状態が悪く、パピルス断片はいずれも炭化し、特殊カメラで撮影することでようやく判読可能だった。こうして読み取った断片266枚を照合し、それぞれの断片の文字の解読と、断片相互の位置関係の検討を続けて、最初の校訂テキストが刊行されたのだった。266断片中位置不明のままである113断片がいずれも極小の断片であるため、校訂の大幅な改変はないであろう。巻子本は外側の方が焼失の度合いが高いため、コラムも数字が若いコラムの損傷がはなはだしく、小さな断片のほとんどがこの冒頭数コラムに属する断片であるので、損傷がはなはだしい最初の数コラムの復元が特に難しく、研究代表者桜井はDPの前半部の解読により多くの時間を割いた。なかでも第6コラムが本研究の最終的課題である「古代ギリシアにおける多新教と一神教の関係」への大きな示唆を含むと考えられるため、最終年度はこのコラムを集中的に検討した。以下はその試訳である。「祈りと供儀は魂を宥める。そして、マゴスたちの魅惑的な歌は、道を遮りダイモンたちを排除することができる。道を遮るダイモンたちは魂に対し敵対する。供儀をマゴスたちがするのはこのためである、あたかも代償金を支払うように。そして、彼らは聖なるもの(供物)に対して水と乳を注ぐ。そこから彼らは(死者への)献酒も行う。(以下略)」ここにあるマゴスについて、それがペルシアの供儀を担当する神職か、あるいはギリシアの神々の系譜を朗唱する者や巡回する占い師に対する名称か、明らかにするにはさらに検討を加える必要があり、本年3月に新アクロポリス博物館で前6、5世紀のアテナイとペルシアとの関係について調査した。今後はこの成果を論文「デルヴェニ・パピルスの歴史的背景」としてまとめ、その中に同パピルスの翻訳も含める予定である。
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T.Osada(eds.), The Parthenon Frieze: The Ritual Communication between the Goddess and the Polis
巻: 1 ページ: 83-90
KODAI
巻: 16 ページ: 1-4