研究課題/領域番号 |
25580169
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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研究分担者 |
槙林 啓介 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 講師 (50403621)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 塩業考古学 / 製塩土器(盔形器) / 塩田成立 / 中国 / 韓国 / クロスナ層 |
研究概要 |
2012年度、山東大学と実施した研究打合せの成果を受けて、2013年度は中国の塩業研究者との議論を深めた。9月に実施された『日中比較塩業史比較研究-その可能性を展望する-』(東北学院大学アジア流域文化研究所主催)にシンポジウムとして参画し、その際、発表者である王青氏(山東大学)、白九江氏(重慶市文化遺産研究院)と討論し、中国における古代塩業の二つの中心地、山東地域と四川地域における塩業の研究動向と課題について議論した。とくに製塩土器の発生については四川が古い一方で、西周代以降の共通性について議論が深まった。また山東地域の西周代における鹹水(かんすい)を地面に撒くという行為の技術的特性について日本の揚浜式塩田方との接点を見いだした。 韓国においてはこれまで確実な製塩土器の発見は皆無であったが、朝鮮半島西海岸の原三国時代から三国時代にかけての貝塚遺跡において、内陸地域の遺跡で出土しない粗製土器が存在することを明らかにし、その土器の破損状況、色調などから製塩土器の可能性が極めて高いことを発見した。 日本においては愛媛県上島町佐島に所在する宮ノ浦(みやんな)遺跡の発掘調査を進め、良好な古墳時代前期の製塩土器包含層を確認するとともに、製塩活動と温暖化によって生じた「クロスナ層」とが密接に関係していることを明らかにした。 また中国、韓国、日本の製塩土器を用いた煎熬法の相違について比較の必要性が生じ、製塩土器の復元に着手し、煎熬実験も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国、韓国における基礎資料に関しての文献・画像・図面等、予定した量・質をほとんど収集することができた。中国、韓国の研究者と直接、意見交換ができたことによって、次回実施する両国における調査活動が順調に実施できることとなった。ただし、中国・四川地域の塩業に関してのみ、新石器時代という最古段階の資料について、収集はできたものの、十分に理解・説明できる程度に吟味していないという現状がある。そのため(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
山東大学、重慶市文化遺産研究院を訪問し、塩業資料を実地で観察し、発掘調査担当者と議論し、山東地域の西周代塩業の特質についてその成果を整理する。韓国については、高麗大学環境考古学研究所、ソウル大学所蔵製塩土器を観察し、許可を得られれば自然科学的な分析を実施し、製塩土器の特質を明らかにする。また日本に関しては、宮ノ浦遺跡の発掘調査をさらに進め、製塩遺跡の形成プロセスを解明し、製塩土器の使用(製塩炉)から廃棄にいたるプロセスを解明する。最終的に製塩土器の特質、製塩作業空間の特徴について日中間の比較検討を行い、成果をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
山東大学から研究者を招聘し、煎熬法に関する意見交換を実施し、また韓国の百済地域の貝塚発掘調査担当者を招聘し、製塩土器の破片資料の提供を受ける予定であったが、先方の都合上、中止に至った。 また、日本、韓国、中国の製塩土器の底部の被熱状況に相違点があることが判明し、その比較実験のために製塩土器を焼成・復元を開始した。安定的な焼成ができないために電気式の焼成窯を購入し、煎熬実験用製塩土器を安定的に供給する予定であったが、電気窯設置予定の棟が耐震工事による改築で搬入できないことが判明し、購入を送らせたため。 2016年度4月に研究代表者、分担者が山東大学を訪問し、研究交流を実施する。また5月には韓国より研究者を招聘し、製塩土器に関する資料提供を受けることとなっている。 電気式窯は4月に購入する。
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