2013年度より山東大学の共同研究者、方輝、王青氏と東アジアにおける塩業考古学の研究成果を共有する場を設ける計画を立てた。その計画に従い、2014年4月26日、27日、山東大学において国際学術シンポジウム『塩業考古与古代社会(塩業考古と古代社会)』を開催した。ここで研究代表者、研究分担者、研究協力者全員が報告を行った。またこのシンポジウムではこれまで中国の塩産地として知られる四川、山東以外の地域からも報告者を募り、さらには韓国からの参加者もあり、東アジアの古代塩業に関する議論のプラットフォーム形成を着実に一歩進めることができた。この国際シンポジウムでも話題にした古墳時代以降の製塩活動と環境変動との密接な関連については、中国や韓国においても議論する余地が大きいことを確認することができた。 また研究代表者と研究分担者は愛媛県越智郡上島町佐島にある宮ノ浦遺跡を継続調査し、古墳時代前期の製塩土器集積場を検出した。この製塩活動の痕跡が機構温暖期に海浜地域に形成されるクロスナ層の上あるいは中に残されていることから、製塩活動とクロスナ層の形成とが密接に関係していることを確実なものとした。この遺跡では製塩土器の型式が地点ごとに変化する状況も突き止めた。また瀬戸内沿岸地域における製塩遺跡を見直した結果、いくつかの遺跡でもクロスナ層と製塩の痕跡とが確実に伴っていることから、製塩遺跡の時代による消長が環境変動に起因する海浜地形の変容に対応した現象であることを確信するにいたった。
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