研究課題/領域番号 |
25580176
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
荒木 一視 山口大学, 教育学部, 教授 (80254663)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食料供給 / 近代 / 植民地 / フードレジーム論 |
研究概要 |
計画にしたがい,年度の前半には近代日本の食料需給動向の解明に取り組み,米を中心にして明治以降の食料の海外依存を描き出した。具体的には明治以降の工業労働者の析出,それに対する食料供給を支えるための東南アジア他からの米の輸入,第1次大戦を期に植民地域内での米自給の取り組み,その結果,見かけ上は米自給体制を確立するものの小麦貿易の制限と朝鮮半島の凶作によりそれが破綻すること,これを補った国内小麦の増産と東南アジアからの米輸入も戦争の遂行と共に瓦解し,戦中・戦後の食料難を迎える。食料供給をになった植民地を失うことで,基本食料の北米依存を強めながら戦後から今日へといたるまでの枠組みを地理的なパターンとして提示した。その一部は,H25年12月の経済地理学会西南支部例会において発表した。 また,年度の後半を中心にして地域別の分析を進めた。対象地域は大きく台湾,朝鮮半島,中国大陸,その他に分けられるが,当初の予定どおり台湾の分析から取り組んだ。H25年夏には台湾の淡江大学で歴史学を担当する林教授と本研究に関して議論をする機会を得たほか,H26年3月には学内の経費により台湾を訪れ資料の収集に努めた。台湾にかかわる地域別の分析は次年度以降も継続する予定であるが,戦前期において台湾米が国内の工業発展を支えたであろうこと,それに対応して台湾の港湾や鉄道の整備が進められたことを示し,フードレジーム論による解釈を試みた。なおこうした成果の一端は「フードレジーム論と戦前期台湾の農産物・食料貿易」山口大学教育学部論叢63-1に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の前半を中心にわが国の食料需給を,後半を中心に地域別の分析に着手するとした予定どおりに研究が進んでいる。台湾の分析を先行させることも当初の予定どおりであり,学内の別の事業にかかわってであるが有力なカウンターパート(淡江大学・林教授)を得ることができ,研究に対しての助言や資料収集の便宜を得ることができたことは幸運であった。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り地域別の分析を進めたい。具体的には先行する台湾に引き続き,朝鮮半島や中国大陸,及びその他の地域についての研究に着手する。また,フードレジーム論的な解釈などの理論的な側面についても,並行して検討を進める。現状で研究計画に大きな変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表を隣県で行ったため予定額よりも旅費が少なくすみ,その後の調整でも残金が発生した。 必要な物品の購入に充てたい。
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