本研究は、第二次インドシナ戦争、社会主義化、市場開放というラオスの現代史のなかで、山地民の土地利用がどのように変化したかを、空中写真の分析と現地での聞き取り調査から明らかにしようとするものである。特に、第二次インドシナ戦争がラオス山村の土地利用に与えたインパクトはとても大きいが、このことに関してはほとんど研究がない。本研究もここに焦点を当てる。 平成27年度の前期は対象地域の空中写真の分析に時間を費やした。また、焼畑社会での家畜飼養に関する英文の論考を執筆した。これは、マルコム・ケアンズ氏の編集による平成30年出版予定の本の一章として書いたものである。ラオスで「サナム」と呼ばれる、焼畑と家畜飼養の拠点について書いた。サナムは古い空中写真にもよく写っており、この論考は本研究課題も関わっている。 9月には12日間、ラオスに渡航した。まず、ラオスの国立地図局にて、対象地域の1982年の航空写真のフィルムをスキャンさせてもらった。この航空写真はすでに、紙焼きのものを持っているが、スキャン画像を得ることで、より鮮明な画像が得られた。また、対象地域のルアンパバーン県シェンヌン郡にて、過去の土地利用について聞き取り調査を行った。 後期には、集落、水田、焼畑のみにしぼって、1945年以降の土地利用変化を対象の7ヶ村(116平方キロ)について明らかにしようと、空中写真の分析を続けた。最終的には、3月の日本地理学会での発表に結実したわけであるが、ここで扱ったのはそのうちの1村(20平方キロ)のみである。 2月には、ラオスに10日間渡航し、ルアンパバーン県シェンヌン郡での現地調査を続けた。この調査により、第二次インドシナ戦争前後の1940年代から70年代までの集落の移動や人々の生計、土地利用について、重要な情報を得ることができた。現在、得られた情報の整理を行っている。
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