最終年度において実施した研究の主な成果は、以下の3点である。第1に、これまでの3年間の研究結果について、2016年に成文堂から出版予定の『アメリカの憲法問題と司法審査』に所収予定の論文として「移民と憲法問題」を執筆した。この論文では、アメリカの移民問題の歴史を振り返った後で、不法移民の子弟のうち一定の条件をみたした者に合法的な地位を与えるように、オバマ大統領が命じた大統領命令の合憲性について検討を加えた。この問題は、移民問題に限らない行政国家における大統領権限にかかわる権力分立上の問題があるが、その中で移民問題に関する大統領命令は、最も鮮明な形で問題を提起している。移民法学者の多くは、オバマ大統領の政策を支持しているが、憲法上の問題点が多いということを指摘した。 第2に、アメリカ憲法判例研究会および合衆国最高裁判所判例研究会で、移民法関係の判例について紹介した。アメリカ憲法判例研究会では、不法移民の子弟の公教育を受ける権利を認めたPlyler v. Doe判決について報告した。この報告については、それを論文の形にまとめたものが、今年度出版予定の『アメリカ憲法と公教育』(仮題)に掲載される予定である。また、合衆国最高裁判所判例研究会においても、近時の連邦最高裁の判決のうち、アメリカ市民の外国籍配偶者に対するビザの申請を否定した判決について、判例報告を行った。 第3に、昨年3月にわが国に来日した、カリフォルニア州立大学バークレー・ロー・スクール教授の講演について、それを日本語化したものについて監修を行った。当該翻訳は、慶應義塾大学法学部の機関誌である『法学研究』88巻6号(2015年)69頁に掲載した。 さらに、これらの研究成果に関する必要な調査を行うために、アメリカでの移民法関連のコンフェレンスにも積極的に参加した。
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