(1)前年度に引き続き、危機管理から対策までの段階的なモデル応用の可能性を想定にいれつつ、「広義のリスク」にまつわる諸分野の様々な既存研究につき考察を行い、危機管理学で採用されている段階的なモデルの応用・発展可能性について検討した。 (2)行政法学の研究対象となる諸分野の個別法につき、そこで採用されている手法に着目し、採用されている手法の時期や組み合わせにつき比較検討を行い、新たな観点からの諸分野個別法の類型化を試みた。 (3)わが国における「社会安全論」の内容やその構成、議論状況につき、法律学的見地からの考察を行った。とりわけ、刑事法学の理論枠組みを基礎としていると考えられる社会安全論の領域につき、行政手法を検討軸とした行政法学的なアプローチにも理論的貢献の可能性があるのではないかという視点から、議論状況の精査を行い、社会安全論の分野における「行政法学的なアプローチの可能性」についてまとめた。 (4)行政法学の研究対象となる諸分野の個別法につき、外国の法制度との比較を通じて、わが国の制度の特徴を洗い出した。また、外国の法制度を参考にしながら、わが国の法制度にどのような改革や改変の工夫が可能かについて検討し、考え方を取りまとめた。検討結果として、制度設計の重要点として、法律の制度を実効的に執行するための組織構築のあり方、各主体の取組を円滑に進めるための情報共有のあり方、各主体の取組へのインセンティブを高める手法のあり方、があることを導出した。 (5)情報共有のあり方については、東京都の「大東京防犯ネットワーク」を具体的な素材として、関連する検討会への参加の活動を通じて、安全安心行政の実効的執行を可能とするために必要なプラットフォーム作りのあり方、情報の発信・共有のあり方について、現状を分析し、課題を抽出し、あるべき方向性についてまとめた。
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